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05.

フォレストに、悪魔に会わせてくれ、と 藁にもすがる思いで頼み込んだが 答えはNOだった。 もう、見えないのだと言われて 今度こそ闇が心を支配していく。 ああ、彼が死ぬのならば俺も逝こう。 そうすればきっと一緒にいられる。 そんな事まで考えていれば フォレストは、あの日のように 優しく、優しく微笑んで 俺がアレストに向けるような愛しい瞳を揺らし 俺の事が好きだと言った。 未だ傷だらけのその手を振り払い、 バケモノを見るような目で彼を見る。 なんて事を言うんだ。 実の兄が、間も無く死ぬというのに。 なんでそんな事言えるんだ。 信じられない。 「ごめんね」 そう、呟いたフォレストは 酷く悲しげに笑っていた。 顔を見たくもなくて、俺は逃げるように その場を去る。今までなら 人の好意を邪険にするのは自分のプライドが 許さなかった。けれどそれどころじゃない。 今、フォレストに向けられた好意は まるでアレストを馬鹿にしてるようで。 許せなくて。 病院に戻り、未だ目を開けない アレストをじっと見つめる。 小さな手を握り、何度も神に願う。 まだ連れて行かないでくれ。 俺の命をくれたっていい。 だから彼だけは救ってくれ。 結婚したら、 色んなところに連れていくつもりだった。 色んな景色を、世界を見せるつもりだった。 まだ何一つ叶っちゃいない。 それなのに、連れていくなんて酷い話だ。 俺の体温が、彼に移ればいいのに。 何度も何度も彼の手を摩り 体温を送る。 けれど一行に温まる様子はなくて。 焦燥感と絶望が目の前で揺れていた。 あと、1時間だ。 あと1時間で彼は、きっとこの世を去る。 目に見えて息は浅く、顔は白い。 「頼む…頼むから、アレスト…目を開けて… お願いだから…」 彼の泣き虫が俺に移ったのか、 目から大量の涙が溢れた。 ああ、神よ。 どうか。彼を助けて。 貴方の代わりに俺がこの世で彼を幸せにするから。 連れていかないで。 乞い願いながら、重力に逆らえない 涙を落とし、視界を歪ませる。 目も、頭も、胸もどこもかしこも痛くて堪らない。 一分一秒でも彼を見ていたいのに。 涙が邪魔で綺麗に見えないんだ。 苦しくて、苦しくて。目を伏せた時 ふと、愛しい声がした。 「…レオン、どうして、泣いてるの?」 目を開けると、紫の瞳がこちらを見ていた。 信じられず、言葉さえ出ない俺に アレストは困った顔をする。 「レオン?レオン、どうしたの?どこか痛いの?」 心配するような声色。 アレストは起き上がり、俺の背を摩る。 その手はすっかり、温かくなっていて 幻覚じゃないのか、とその白い頰に触れても やはり、温かかった。 助かった。彼は助かったんだ。 神はやっぱり見放さなかった。 良かった。 子供のように泣く俺にアレストは 焦りながら何度も何度も 背中をさすってくれた。 その温かさが、余計に涙を誘い 強く強く彼を抱きしめ 確かに聞こえる強い心音に、 声をあげて、泣いた。

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