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sideアキ: 初めまして、同室者……さん?
「ーーふぅ、こんなもんかな」
手持ちの荷物を片付けて、ホッと一息ついた。
(櫻さん、いい人そうだったな。ハルと仲良くなっても大丈夫そう)
話しながら観察してたけど、あの柔らかい笑顔と優しい雰囲気は決して演技とか騙そうとかそんな感じじゃなかったと思う。
まだ会ったばかりでほとんど直感だけど、多分合ってる。
寮監さんは大丈夫。
仲良くなって、ハルを助けてもらおう。
(次は……)
共同スペースの、向こうにあるドアを見る。
「佐古 ヒデト、かぁ……」
『小鳥遊くんの同室者は佐古くんと言います。
彼は中学からの持ち上がりで、私もよくお世話していました。根はとてもいい子なので安心してください』
ハルのことを考慮して部屋を決めてくれた櫻さんが、同室者に悪い奴を選ぶとは思えない。
(櫻さんもあぁ言ってたし、多分大丈夫な奴だとは思うけど……)
佐古は俺より早く入寮したみたいだが、俺たちが着いた時には靴がなかった。
多分どっかに出掛けてるんだと思う。
「んー、待ってみっかなぁ」
片付けしてたら大分時間が経ってて、もう夜。
キッチンでコーヒーを作って、共同スペースにあるソファに腰掛ける。
片付け途中に共同で使う風呂場とかキッチンとか覗いてみたけど、すごく綺麗に整理されてるから多分ガサツな奴ではないっぽい…
(どんな奴だろう、俺よりデカいかな……
取り敢えず、いい奴そうだったら仲良くなろう)
こういうのは初めが肝心!
もう夜遅いしもう直ぐ寮の消灯時間だし、そろそろ帰ってくるだろう。
緊張半分楽しみ半分で、ワクワクとコーヒーを飲みながら佐古を待つ。
だが
この日、結局佐古が部屋に帰ってくることは無かった。
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