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「ぁ、あの、小鳥遊くん……」
「ん? なに?」
急に、丸雛が恥ずかしそうにもぞもぞし始めた。
「あの…そのっ……な、名前で呼んでもいい、か、なぁっ?
おれたちのことも全然名前で呼んでくれていいし!
ってか寧ろ呼んでほしいし!
だから、そのっ…えぇと、うぅぅ……」
必死でワタワタと手を動かしている。
勇気を振り絞って言ってくれたのだろうか。
(顔、真っ赤だ……)
たったこれだけ話しただけで、何処に仲良くしたい要素があったんだろう。
でも
(嬉しい、な……)
「あ、嫌ならそれで全然いいよっ! 初対面で馴れ馴れしいとか思ってたら本当にごめん。
コネ…とか、そういう繋がりが欲しくて言ったんじゃないんだ! ただそのっ、本当にーー」
「うん、わかってるよ。大丈夫」
丸雛は、そんな奴じゃないと思う。
成り行きをそっと見守る矢野元も、きっと違う。
ただ純粋に、そう言ってくれてる。
それが痛いほど伝わる。
だから
「僕もハルって呼んでほしいな、イロハ」
「…っ! ぅ、ん、うんっ、ハル!」
「わぁ、っ!」
俺の方から呼ぶと、嬉しそうにギュウッと抱きついてきた。
ハルの体温しか知らない俺の身体はビックリしてしまって。
「こらイロハ、ハル驚いてるから止めろって。 俺のこともカズマでいいから。よろしく、ハル。
……ハル?」
「…? ハル?」
(あったかいな……)
無意識に、ギュウッと抱きしめ返す。
急に黙ってしまった俺に、ポンポンと背中に回された手が動いた。
「っ、ぁ、ごめんっ!」
「ふふふっ、んーん全然いいよ?
ハルぎゅってされるの好き? いっぱいしてあげるからね?」
ぎゅうぎゅうともっときつく抱きつかれて、
心臓がもっと苦しくなる。
(あの時と同じだ。 心臓が、ぎゅうってなる……)
昨日櫻さんに顔を包まれた時と、同じ感覚。
あったかくて、むず痒くて、何故だか泣きそうになる。
「ふふふ、何だかハル可愛い、ぎゅー!」
クスクス笑うイロハと、優しく見守るカズマに、どうしようもなくなって。
「……っ、ぁりがとっ、イロハ、カズマ…っ」
(ハル。いい人たちに、出会ったよ)
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