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「よし!それじゃぁ行こっ、ハル!」 「そうと決まれば即行動!」と、イロハに腕を絡められてパッと立たされた。 「先ずどっちに行くー?」 「んー、そうだなぁ……」 (さっきはこっちから歩いてきたんだよな…だから……) 「あっちかな」 来た道と逆方向を指差した。 「了解っ!じゃぁしゅっぱーつ!!」 「わっ、ぁ、ちょっ」 グンッ!と腕を絡められたまま、どんどん進んで行く。 「カズマ、こっち何があるか知ってる?」 「いや、俺も知らない」 「そっか!じゃぁみんなで探索だね!」 楽しみ楽しみ!と前を歩くイロハとカズマのペースに、 ズンズンと引っぱられるように俺も歩いていて。 (ぁ、だめだっ) 歩くスピードが速すぎる。 ハルがここに通うようになっても、このペースで歩かれたらきっと辛い。 ーーそれは、無意識だった。 気づいたら、バシッ!とイロハの絡んでいた腕を振りほどいてしまっていて。 (っ、しまっ、!) 「え………?」 驚いたような、呆然としたような そんな表情の2人が振り向く。 「っ、ぁ、その……っ」 やってしまった。 口で言えば良かったのに、身体が先に動いた。 (ど、しよ…ハルの友だち傷つけちゃったっ) 折角できた、とてもいい人たちだったのに。 (俺、馬鹿だ……) ハルなら、もっと上手くできた。 ハルなら、イロハたちを傷つけずにちゃんとできたはず。 (っ、ごめん、ハル……っ) 「は、ハル……どうしたの? 何か嫌だった?」 控えめに、悲しそうに恐る恐るイロハに訊かれて、ブンブン首を振る。 「ちがっ、そうじゃなくて! ぼ、僕っ、そんなに速く歩けなくて…… ぁ、イロハ達が普通のスピードなんだと思う!速いって怒ってるわけじゃなくてっ!僕が遅いから…その……っ。 ご、ごめんね!やっぱり付き合ってもらうの悪いや。すごく時間かかるし、探索だから周り道とかしちゃって、そしたらもっと時間かかるしっ! だから、やっぱりひとりで行くよ。 ほらっ、僕ちゃんと学校のパンフレット持ってきたんだよね!だからね、そのっ、」 何て、言えばいい? (やばい……) 何て言ったら、これ以上傷つけずに済む? 何て言ったらーー 「ハルっ!!」 「っ、ぁ……」 ハッ、と顔を上げると 目の前一杯に、2人の顔。 「ハル!ハル大丈夫だから。 おれたち別に何とも思ってないし、本当に大丈夫だから!だから落ち着いて、ねっ……?」 「顔色が悪い。ちょっと休むか?」 両手をぎゅぅぅっと掴んでくれるイロハと 前髪をかき上げて顔色を確認してくれるカズマ。 「な、んで? 僕、大丈夫だから……だから、もう2人ともーー」 「っ!ハル!!」 キッ!と大きな目で悲しそうに見つめてくるイロハに、もっとわからなくなる。 (何でそんなに悲しそうな顔するの? 俺間違った…?) 「はぁ、落ち着けイロハ。 ……ハル、何で俺たちが悲しそうな顔してるか分かるか?」

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