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〝友だちになりたい〟
それだけでこんなに飯用意して、いつ帰ってくるかわからない俺を…消灯時間までいつも待ってた……?
優しく笑うこいつは、何だか櫻さんみたいに暖かい気がして。
(っ、意味、わかんね…)
「お前、アホだろ」
「えぇぇ!? 今の会話から何でそうなるの!?」
わーわー俺に文句言ってるこいつに、何とも言えない気分になる。
(俺、どうしたんだ……)
「「ごちそうさまでした」」
結局ペロリとたいらげてしまった。
(部屋行くかな)
「え、待って?」
ガタッと立ち上がって部屋へ行く俺をあいつが止める。
「……?」
「まさか食べるだけ食べて何もしないってことは、無いよねっ?」
また、こいつの背後から黒いものが出だしてきた。
「っ、俺、そういうのやったことねぇからっ」
「僕が教えたげるよ! 一緒に片づけよう?」
はい、テーブルからお皿運んできてー。
サッとエプロンを付けてそいつはテキパキと動き始める。
(何か俺、いいように操られてねぇか……?)
だが、確かに食うだけ食って何もしないのは常識ねぇよな…
取り敢えず、言われたように食器を洗ってるところへどんどん運んでいった。
「……終わった」
「はい、じゃぁ僕今洗う人になってるから、濯ぐ人になってー」
「隣どうぞ」と移動するそいつの隣に並んで、渡された食器を不器用ながら濯いでいく。
カチャカチャと食器の擦れる音と、水の音。
チラッと隣の奴を見る。
俺の肩くらいの身長、サラサラの髪の毛、整った顔、細い首、薄い肩。
食器を洗う腕も、折れそうに細い。
「……ん、僕のこと気になる?」
「ぁ、いや…」
チラッとのつもりが、知らず知らずじぃっと見てしまっていた。
ーーそれは、何の悪気もなくて。
「お前って病弱、なんだよな」
ポツリと漏れた、その言葉。
ガチャンッ!!
そいつの持ってる食器が、勢いよくシンクに叩きつけられた。
(っ、何だ!?)
「……今」
俯いてて、顔がよく見えない。
「今、そういう目で、 僕のこと見てたの?」
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