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「何かせんせー来るまで教室待機みたいだねぇー」
早めに着いちゃったし暇だー、とイロハが俺の席まで遊びに来た。
最初ということもあって席はあいうえお順。
俺は小鳥遊だから、教室の真ん中より少し廊下側の後ろらへん。
佐古と少しだけ席が近くて嬉しい。
「担任、どんな先生かなぁ…?」
「面白い人だといいなー!おれ真面目より面白いほうがずっと好き!楽しいしさ!」
「中学の頃はねーー」とペラペラ話しはじめて、それをうんうん聞きながらそっと周りを観察した。
だんだんと教室に生徒が増えて来て。
気のせいかもしれないけど、廊下にも他のクラス?の人たちが沢山いて。
みんな、何となくだけど俺じぃぃっと見てるような気がする。
(な、んだろう…ちょっと緊張する…かも……)
「ハールっ!ちょっと聞いてるー?」
「っ、ぁ、ごめんごめんっ」
「もーまたぼぉっとしちゃって……きつかったら早めに言ってね? 今日は入学式だけだけど、式中でも気持ち悪くなったりしたらすぐに教えて?」
「うん、有り難う」
「えへへ、うんっ! で、それでねーー」
またペラペラとイロハが喋り始めた。
(…何だろう。このお喋りが有難い、かも……)
この視線の中を静かに耐えるのは、正直辛い。
イロハには、それがわかってるのかもしれない。
ほんっと、支えられてばっかりだな。 俺たち……
いつか、ちゃんとお返しがしたい。
(その時は、もう俺じゃないと思うけど)
今はイロハに甘えさせてもらおうと、笑いながらその話に相槌を打った。
ガラッ
「おーし、お前ら席つけー」
暫く経ってから前のドアが開いて、学生簿を持った人が入って来た。
「…………うん?」
髪型しっかり。
アクセサリーしっかり。
スーツの着崩し方しっかり。
あれは、いかにも……
(ホスト……?)
「ぇ、あれ先生なのっ?と、取り敢えず席戻るね!」
パタパタとイロハがかけていく。
は?
(あれが、先生…だと……?)
「おし、全員席着いたな。俺がこのクラスの担任だ、自己紹介質問等は後。
分かったらさっさと廊下並べ。あぁ順番は適当でいい」
俺たちは一番最後に入場すっから、ゆっくり歩けよてめぇら、いいな?
一瞬チラッと、ホストと目が合ったような気がした。
(え?)
ゆっくり歩く?
それって、もしかしてハルのこと考えーー
「おら、サクサク動け。ちんたらする奴は嫌いだ」
………前言撤回。
(な、なんだこの先生は……)
こんな学校に、こんな奴いていいの!?
いや現状いちゃってるけど! いいの!? まじかよ!
「やった、順番適当だって! 一緒に並ぼうハル!」
俺の周りには、自然といつもの3人がいて。
「う、うん」
取り敢えず、そのまま列の後ろの方に並んだ。
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