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(う、わぁ……改めて見ると本当でっかい学校だったんだな………) 体育館に入ると圧倒的な生徒の多さにびっくりしながら、 上級生の座ってる間を歩いて〝A〟と書かれた席に座る。 トントンッ 「ハル、気持ち悪くなったら言ってね」 「うんっ、有難うイロハ」 隣に座るイロハの優しさに感謝しながら、前を向いた。 『では、これより入学式をーー……』 緊張してる新入生。 それを後ろから眺める上級生。 (なんか、歩いてる時あちこちで〝小鳥遊〟って聞こえた気がする…やっぱうちの家は有名なんだなぁ) ここでは小鳥遊も普通だと思ってたけど、どうやら違ったらしい。 (ハルが通い始めるまでに、この〝小鳥遊〟もどうにかしなきゃな……) さてどうするか…… この学校に上手く溶け込んで、 なおかつ、ハルの事を助けてもらうには………… ボーッと入学式が進むのを眺めながら、グルグルと考えていた俺は 周りの空気の変化に全く気がつかなかった。 『『『『キャァーーーー!!!!』』』』 「っ!?」 (な、何だっ!?) 「は、ハル大丈夫っ?」 「い、イロハ、これなに……っ!?」 (耳いったい…!) いきなり、綺麗めな生徒や可愛らしい生徒が叫びだす声と それと同じくらい感動しているような『ほぉぉ……』というため息を吐く生徒の声に、体育館が支配される。 思わず耳を両手で塞いだ。 (うるっさい!!何だよこれ! 入学式ってこんなのがあるのか!?) 「あ、そっかそうだった…ハル高校からだったね、ここの学校」 おれたち中学からこれだったから、慣れてしまってて言うの忘れた……ごめんね! イロハが、秘密話をするように俺に近づく。 「うちの学校ちょっと特殊で、生徒会と風紀は凄く有名なんだけど、その中でも1番生徒会長が人気で。 みんなの憧れ?みたいな感じになってるんだよねぇ…」 「そ、そうなんだ……」 (何だそれ、テレビのアイドルかよ。 学校でこんなキャーキャー言う周りも周りだけど、言われる方も言われる方だな) 意味わからねー。 「特に、今回生徒会長を務めてらっしゃる方は例年より遥かに人気で…まぁそれだけ実力も有るんだけど…… 普通は3年生になってから会長とかの任命があるんだけど、今回は異例で2年生の時から会長に任命されたんだ。 中学生でも生徒会長してて凄く優秀で、それが決め手だったみたい」 (何だ、それは…) 「後は家がね、大きくて……」 あはは、とイロハが困ったように笑う。 (あー……) 成る程、な。 家柄も良く成績も優秀で、全校生徒に人気がある……と。 (絶対関わらない方がいい奴ナンバーワンだな) 関わると、小鳥遊がもっと目立つ。 小鳥遊として徹底的に避けなければ…… (まぁ、こんだけ人がいたら会長様にはハルなんてわかんないか) ってか普通に生活してれば生徒会とかと関わること無いだろうな。

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