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「さて、我々の一族についての話はこれくらいにして」
パンッと先輩が手を叩く。
「親衛隊についてお話いたしましょう」
親衛隊とは、ある1人の方をお慕いし、その方が生活しやすい様身の回りのお手伝いをする部隊の事。
そして遠からず近からず、そのお方を静かに見守る者の集まりなのだという。
だから親衛隊の誰かが誤ってその方に告白したり無理に近づいたりしたら、体裁若しくは除名等の処分となる。
「……以上が大まかなご説明なのですが、此処までよろしいでしょうか?」
「はい」
(要するに、親衛隊というのは抜けがけ禁止の同盟みたいなものか……)
その人が誰かと恋人になっても嫉妬が生まれるから、それだったらみんなでその人を平等に慕っていこうっていう集まり…ってことかな?
「基本的に、大きな会社の子だったりには必ずと言って良いほど親衛隊ができるんだよー!」
「そうなんだ!じゃぁイロハ達にもあるの?」
「いや、俺たちには無いな」
「中学2年まではあったんだけどね……」
あまりに親衛隊の人達が強すぎて2人でいる時間が少なくなってしまって、それで一緒に解散させちゃったんだぁ…
申し訳なさそうにえへへと笑うイロハの頭を、カズマが優しく撫でる。
「まぁあの時はまだ幼かったって事もあるし、俺たちも親衛隊と上手くリレーションが取れてなかったからな。それも原因なんだ」
「そうだったんだね」
(わざと作らないっていう選択肢も出来るのか)
成る程。
「親衛隊は、まず〝やりたいです!作りましょう!〟っていう立候補から始まって、親衛隊長・副隊長の選出だったり幹部の選出だったりがいろいろあって、人数とメンバーを把握してそれをファイリングしてって……全てが整ってから初めてそのお方の処に報告しに行くのが普通なの!
だから、設立まで平均1、2ヶ月はかかっちゃうんだけど……」
「ふふふ、今回は異例ですね。
はっきり申し上げますと、小鳥遊様の親衛隊は一刻も早く作ってしまわなければならない状況でしたので」
一刻も、早く……?
「どういうことですか?」
「先ずは〝小鳥遊〟という姓。これについてのご自身の立場等は、既にご存知ですね?
その次に、先日の食堂での出来事です」
(食堂?)
「あの龍ヶ崎と対等にお話されている小鳥遊様のお姿に、多くの生徒が心惹かれました」
あの誰もが固まり震えあがってしまう場面で、たった1人真っ直ぐにシャンと立ち、真っ向から物を言うハルの姿に多くの生徒が驚愕・呆然とし
ーーそして、ただただ魅了された。
「もう、正直パンク状態だったのです」
〝小鳥遊様の親衛隊を作りたい、それに入りたい〟
そんな生徒が数多く集まりすぎてしまって。
「このままでは生徒同士で小競り合いが起きかねると思ったのです。そう言った背景もあり、今回は早めに立ち上げさせていただきました」
(そんなことが、あってたのか……)
全く知らなかった。
食堂での出来事は今から3日前。
それを先輩がこんな短期間で統一して、さっきイロハが言った事を全てやってくれたのだろうか。
(迷惑、かけちゃったなぁ……)
こんな所にしわ寄せが来るとは、思ってもみなかった。
「お手数おかけしてごめんなさい、月森先輩」
「いいえ、小鳥遊様が謝る必要は毛頭御座いませんよ。月森からすればこのような事、大変ではありません。
それに、元々私は小鳥遊様の親衛隊長を務めるつもりでしたので、今回はそれが少々早まってしまっただけです」
「え?」
(元々って、どう言うことだ……?)
先輩の方を見ても、クスクス笑って「それはおいおいお話いたします」とやんわり断られてしまった。
「まぁでも、今日1日でメンバーの数は更に増えるでしょうが」
「ぇ、どうしてですか……?」
「だって、本日は小鳥遊様が生徒会役員になられて初の登校日ですから」
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