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sideレイヤ: まどろみと、心地よい時間

サワリ、サワリと髪を撫でられる感覚に、ふと意識が浮上する。 今年は、一段とやる事が多かった。 業務をしなかった奴らの分はまぁ置いといて。 今回の体育大会は、俺が高校の生徒会に入ってから初めての大きな行事だった。 (高校って、中学と違って本当に全部俺らがするのな) 中学の時どれだけ先生たちが業務を少なくしてくれてたかがわかる。 それくらい、高校の生徒会が負担する行事業務は自由度が高い分、やる事が多い。 前日当日にバタバタすんの好きじゃねぇのに、しなきゃいけなかったし。 開会式の挨拶が終わって自分の出る種目もまぁ一通り終わって、やっと一息つけるかと思ったらまさかの保護者に囲まれる事態。 何なんだよお前ら、自分の息子見やがれってんだ…… 経営者本人達が来ている分蔑ろには出来ず、結局愛想笑いで対応しているが…… 学校の行事使って会社の挨拶回りとかしてんじゃねぇよまじ。 しかも、今年はやたらと観客が多い。 (まぁ、狙いは小鳥遊なんだろうが…ハッ、残念だなぁ。あいつは体育大会には出ねぇんだよ) 顔を見せなかったあのTAKANASHIの息子が通い始めたんだ。 恐らく一目見たさでこんだけ集まってんだろうが、ざまぁ見ろだな。 (……あいつ、今1人でいんのか) 後片付けの計画立てさせてんだよな確か。 あぁ、そういえば朝変更された部分共有してねぇわ。 あいつの考え方やたら俺と似てっから、多分今回駐車場に変わった場所を中心に使って計画立ててるだろうな。 やっぱできる奴は業務の仕方も似るのか? あいつの書類をチェックする度に思う。 俺だったらこうするなって事がそうなって返ってくるから、まるで俺がやってるみたいな感覚になる。 (このまま外いてもだりぃし疲れるだけだし、次の出番まで大分時間あるし) 「……生徒会室、行くか」 (ーーてな感じで来たはいいが) 肝心のあいつは寝てやがった。 まぁ、外の歓声がいい感じに眠気を誘うのはわからないでもないが…… 計画表は案の定だったな。 俺だったらこう立てるなという計画そのまんま過ぎて、笑いかけた。 カサリ…と紙の擦れる音。 薄く目を開けて下から覗くと、伏せ目になって書類を見る綺麗な顔が見える。 (まつ毛、長いな……) 片方の手が手持ち無沙汰なのか、サワリサワリと髪を触られたりクルクル指に巻きつけられたりとやりたい放題だ。 俺は動物かなんかかよ。 こうやって、誰かに髪を触られたことはあっただろうか。 まどろみながら考えるが、幼い頃両親にされたくらいか……? 外からは相変わらず、体育大会特有の歓声とか音楽とか、放送の声とかが聞こえてきてて。 (……何か、この空間だけ切り離されてるみたいだな。) カサリ…と書類の擦れる音。 ペンでシャッシャッと書き込む音。 心地の良い、安心する静かさ。 ……嗚呼、本当に (こいつの隣は、居心地がいいな) 余計な言葉はいらず、媚を売られることも無く ただただ、対等に接される。 (まぁそれもあるが……もっとこう…それ以外の何か……) こいつが婚約者だから? いや、それもどうもしっくり来ない。 もっと、内側の…何というか、こう……… (ーーまぁ、いっか) 自分の事だ、そのうち分かるだろ。 今は、ただただこの居心地のいい空間でまどろんでいたい。 こいつの手の感触を感じながら、俺は再び眠りの中に入っていったーー

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