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「シーズマっ。遊びに来たよ」 (また来た……) あれから、龍ヶ崎はちょくちょく図書館のこの場所へ訪れるようになった。 毎日ではない、月に2、3回程。 それも忘れた頃に、タイミングを見計らったかのようにひょっこりと現れる。 普通は付きまとわれても精々2ヶ月が最高だった。 皆んな、私にその気が無いと分かれば興味が失せたように去っていく。 龍ヶ崎もそんな感じだろうと思っていた。 だが、彼の場合は他の生徒のように「俺を主人にしろ」といったスタンスではなく「遊びに来たよ」という軽い感覚で来られるから、どうも対応に困ってしまう。 しかも、主従関係等には一切触れずただただ本気でくだらない事を話し尽くして「それじゃあね」と去っていくのだ。 (謎だ………) 彼は、一体何者なんだ。 何でそんなくだらない話をする為にここへ来る? 〝龍ヶ崎 マサト〟 出会ったその日に即調べた。 あいつが自分で話した通り、確かに彼は龍ヶ崎の分家出身で、しかも次男坊。 とてもじゃないが経営者とは程遠い存在。 だが、あいつが内に秘めているは、今まで出会った誰よりも大きいと感じていた。 それが何なのかは分からないけど…… 「ーーでさ、って聞いてるシズマ?」 「……貴方、どうして此処へ来るんですか?」 (もう、いい加減にして欲しい) 「そんなくだらない話をする為に、ただただ此処へ来ているのですか? 私が欲しいなら、他の学生のように自分のメリットを聞き飽きるくらい私にスピーチすればいいじゃないですか」 「? 自分のメリット? 何だそれは」 「他の方は皆さん口々に仰ってますよ。〝自分と一緒にいるとこんなに良いことがある〟とか〝自分は他と比べてこんな部分が違う〟とか」 「ほーぅ、みんな頑張ってるんだなぁ」 (っ、他人事かよ) この人は、あれだけ大々的に「私が欲しい」と言っておきながら、結局はそれくらいの決意だったという事か? あの強い瞳も、全部がまやかしだったという訳か。 私も見る目が衰えて来たか……? あれだけ幼い頃から学んで来たのにな。 「私に思い入れがないのならば、いい加減私の前から消えてください。もう4ヶ月は付きまとっていますよね。流石に私も限界です」 彼に初めて声をかけられてから、今月で4ヶ月目になる。 いい加減に現界が来た。 「うーん、そうかぁ。それは仕方ないな」 あっさりと、龍ヶ崎は席を立った。 (……こんなものか、所詮は) 嗚呼、私は本当に全く運がない。 私の主人探しの旅は、まだ終わらないkーー グイッ 「っ!?」 「クスッ。 それじゃあ、俺もスピーチタイムといこうか、シズマ」 いきなり顎を取られ、驚いた私の目の前には 前に見たあの意志の強い瞳があった。 「どうして俺は、君が1年生の頃ではなく2年生の4月になった段階で声をかけたと思う?」 (どうして…だと……?) 確かにそうだ。 声をかけるなら、もっと早くても良かったはず。 何故こいつは私が2年へ上がった4月に声をかけたんだ? 「………ふふ、わからないかな? 俺はね、入学当初からずっと観察してたんだよ、君を。 ーー1年間、ね」 「…………は?」

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