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sideアキ: お土産事情と、イロハの事 1
「ただいまハルっ!!」
「おかえりなさい、みんなっ」
新学期が始まって、会って早々ぎゅぅっとイロハに抱きつかれる。
「ふふふっ、ほら、学校行こう?」
「うん!」
イロハとカズマと佐古のいつも通りの4人で、わいわいと学校まで歩いていった。
教室に着いて、いつも通りハルの机に3人が集まってくる。
「何か、本当に久しぶりだねぇ」
「そうだな」
「カズマ達は何してたの?」
「前半で宿題が終わったからな。家に帰ってからは思う存分出かけた」
「いろんなところに行ったんだよ!!それでね、アルバムも作ってきてるんだー!」
「わぁっ、本当に?」
「うん!だってハルとの約束だったもん!いっぱい写真貼ってるから後で見てね!」
「うんうん、楽しみだなぁ。 佐古くんは何してたの?」
「俺は……別に。ただ外のダチ達とバイクで遠出してただけだ」
「遠出…!何処まで行ったの!?」
「……遠いところ」
「だからそれが何処ってきーいーてーるーのぉぉぉ!」
「あーあーうっせーなぁ別に何処だって良いだろうが」
「わーもー佐古くんサイテー、放課後聞きまくってやるんだから!」
「クスクスクスっ」
(何か、こういうやりとりも久しぶりだ)
「あ、おれクラスのみんなにお土産持ってきてるんだよね!」
ガサガサと鞄から大きな箱を出してパカっと開くと、中には綺麗な和菓子がどっさり入っていた。
「ハルには学校終わってから別の物渡すから、待っててねっ!」
「ちょっと配ってくるー!」とパタパタ走っていくイロハを見送った。
「ハル。これは俺からのお土産だ」
「ぇ?」
パッとカズマからラッピングされた袋を手渡される。
「イロハからのはいっぱいあるから覚悟してた方がいいぞ。放課後アルバム持って部屋尋ねると思うから、その時渡されるはず」
「わ、カズマ……有り難う……!」
ラッピングが綺麗すぎて、部屋に帰ってから開けようと鞄の中に大切にしまった。
と、
「ーーん」
「ぇっ、なに……?」
突然ズイッと目の前に佐古の拳が現れる。
「手、出せ」
「? こ、こう……? ーーわっ」
拳の下に両手を置くと、その中からコロンと何かが手の中に転がってきた。
それは、ピンク色の可愛らしい貝殻が付いているキーホルダーで。
「やる」
「ぇ、」
「土産だ」
目を見開いて佐古を見ると、恥ずかしそうにフイッと顔を背けられた。
何のラッピングもされていない中身がそのままのお土産。
なんだか佐古らしくてふふふと笑ってしまう。
「有り難う、佐古くんっ」
「……別に」
(うわぁ、ここにイロハが居たら絶対からかってんな)
それを見越してイロハのいない今渡してくれたのか?
「ピンク色可愛いね。もしかして僕がハルだからピンクにしたの?」
「っ、うっせぇな……」
(図星かよ)
あぁもう本当に佐古可愛すぎんだろ、まじで。
出会った時からは想像できない。
あの佐古が、ハルの事を考えてお土産を買ってきてくれるなんて……
(嬉しすぎる…もうやっばい……)
「さっさとしまえ」
「えー、もうちょっと眺めてたいなぁ……」
「んなもん部屋でもできっだろ」
「そうだけど……」
「みんなー!」
クラスのみんなに配り終えたのか、イロハがパタパタ戻ってきた。
佐古の為を思って、そっとお土産を手の中に隠してやる。
「おかえりイロハっ。終わったの?」
「うん!でも余っちゃった……ちょっとタイラのクラスまでおすそ分けしに行こうかな」
「クスッ、すぐ隣だしね、行っておいでよ」
「そうする!」
ニコッと楽しそうに笑って、再びパタパタと離れて行って
「じゃぁっ、わたしちょっと行ってくるね!」
(ーーえ?)
「ぁ、うんっ! 行ってらっしゃい~」
教室から出て行くイロハを見送った。
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