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sideアキ: 保健委員さん 1
「はい、じゃあ確かに渡したから。また後でな!」
「有難う、忙しい中すまないね」
「お兄ちゃん頑張ってね!!」
「サボるんじゃないよ!」
「なっ、俺別にサボってねぇし!失礼なー……」
「あははははっ!」
楽しそうな、家族の会話。
それを、少し離れたところでぼーっと見つめた。
何だか無性にハルに会いたくなって、ツキンと心が痛む。
(ハル、元気かな……今何してるんだろ)
次に帰るのは文化祭が終わった後だから、またたくさん文化祭の話してあげなくちゃな。
「小鳥遊くんおまたせ、待たせてごめん」
「んーん全然!仲良しな家族だねぇ」
「へへっ、まぁな」
いいな。
嬉しそうに家族のことを思い出して笑みを浮かべる彼のことが、純粋に羨ましい。
(あーぁ、辞め辞め!)
ブンブン頭を振って「おしっ!」と気持ちを入れ替える
(ってか、やっぱ気分悪いな……)
外を歩いても人・人・人で。
まぁジャージを着てるし特別目立つことは無いけれど、それでも物珍しそうに見てくる人たちがいるし話しかけてくる人たちもいるから、大分辛い。
「ね、教室戻る前にちょっとトイレ行ってもいい?」
「あぁいいよー」
「俺外いるから」という彼にお礼を言い、サッと個室へこもった。
ポソッ
「はぁぁ……っ、どうしよ………」
(まじで気分良くなんない…これじゃレイヤと文化祭回れない……)
「また明日もあるだろ? お前の体調の方が心配だし、寮帰るぞ、ほら」って言われたら、どうしよう。
「んな焦るなって。来年もあるんだし、無理のないペースで行こうな、ハル」って言われたら、どうしよう。
(そんなの、絶対やだ……っ)
俺には、文化祭は今日と明日の2日間しかない。
今日を逃したら、多分もう一生……こんなの味わえない。
(それに…レイヤの隣を歩く事なんか、もう無いかもしれない……)
レイヤの隣はハルのもの。
決して俺のものでは無い…けど。
でも、少しでも長くこの場所に居たいと思ってる自分がいる。
(しょうがないよなぁ……だって好きなんだもん)
好き、好き。
大好きが溢れてどうしようもないくらい…好き。
あぁもう……このポンコツ。
さっさとこの気持ち悪いの、どっか行け。
「…っ、はぁぁ……きつい………」
ーーコン コンッ
「ーーーーぁの」
ビクッ
「っ、ぁ…はぃっ」
(ぇ、何………?)
今、俺が入ってる個室のドア、叩かれた…よな?
一体誰に? 他にも個室は空いてるはず……
それなのに、何故?
(ーーっ、まさか……)
あの、変質者に後を付けられていた…とか………
「えぇっと、驚かせてすいませんっ。僕保健委員です!
小鳥遊様がフラフラしながら歩いてらっしゃるのを見かけて出てくるの待ってたんですが、なかなか出られないのでついお声かけしちゃいました……」
「ぁ、保健委員さんですか、成る程……」
(何だ、びっくりしたぁ……)
心配していた人物ではなくて、ほぉっと小さく息を吐く。
「あのっ、大丈夫ですか? やっぱり体調悪かったりします……?」
扉越しだけど、おどおどした少し高めの声が心配してきて、自然と警戒心が溶けていく。
「大丈夫ですよ、ちょっと人混みに酔ってしまったみたいで……」
「ぁ、それでしたら、良かったら少し和らげる薬ありますよ? 保健室ですが貰いに行かれますか?」
「え、」
(そっか……薬! その手があったか!!)
一時的に抑えれたり和らげたりすることができる薬があるのなら、是非頂きたい。
「僕が保健室までお送りしましょうか?」
「ぁ、お、お願いしますっ」
「かしこまりましたっ。それじゃぁお外へ、小鳥遊様。立てそうですか?」
「うんっ、大丈夫。ありがとうございます」
カチャっと扉を開けると、そこには俺やイロハよりも小柄な子が立っていた。
腕には保健委員の腕章が付いている。
(あれっ? 何か、どっかで見たことある子…かも……)
どこだったっけ? わからない…けど……
「随分顔色が悪いですね……」
「あ、ははは…そうですかねぇ……」
「少しフラフラしてますし、早めに保健室へまいりましょうっ」
「うんっ、お願いします」
それから外に立ってるクラスメイトの処へ事情を説明すると「俺も一緒に行く」と言ってくれたが、「ただでさえ凄いお客さんを今も対応してるし大丈夫だよ。薬もらったらすぐ帰るから」と話した。
保健委員さんも「僕がお送りしますのでっ」と言ってくれて。
「まぁ…お前保健委員だし別に変な奴じゃなさそうだし……それなら頼むわ。小鳥遊くん、先戻るけど待ってるから。気をつけてな」と去って行った。
「さて、それでは参りましょうか。小鳥遊様っ」
「すいません……お願いします」
「はい。
ーーお任せくださいっ」
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