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「ヒッ」 「ヒッ、じゃねぇよ。何今更になって怖気付いてんだ?」 カタカタ震えだした肩を、更に力を込めて握る。 「ぃ、ぃたぃ…っ」と呻かれるが、そんなの知った事じゃない。 「おい、どうなんだ」 この白濁は、全部全部 お前が、 「お前が、ハルを汚したのか……?」 「ぁ、ーーっ! ちがう!僕は汚してなんかない!元はと言えばお前らがハル様を汚したんだ!!」 「……あぁ?」 「お前らが…お前らがハル様を、こんなゴミみたいな世界にっ!」 「ゴミみたいな…世界?」 「そうだ!だから僕は、ハル様を救わなければ……そう、救うんだ、ハル様を…ハル様…ハル様っ、ハルs ーーぁぐぅっ!!」 突然横から伸びてきた腕がそいつの頬を思いっきり殴り、俺の手の中から部屋の隅の方へ飛んで行った。 「うぜぇなぁ……ちょっと黙ってろ」 「…佐古」 「っ、佐古、ちょっとストップ、怒り抑えろ。 龍ヶ崎、お前何やってんだ」 「は?」 「さっさと小鳥遊に付いててやれ。さっきから小鳥遊がお前の事呼んでんのが聞こえねぇのか?」 「っ!」 バッと身を翻して再びベッドへ行く。 怒りで、何も聞こえなくなってしまっていた。 「ハル」 「………ぁ、レ、イ……っ」 「ハルっ!」 着ている制服が汚れるとかそんなもん何も考える事なく、ただ一心にハルをきつく抱きしめる。 「っ、ハル、ハルもう大丈夫だからな、安心しろ」 「……月森、お前は窓開けてこの部屋換気しろ。俺は佐古んとこ行く。 ーーおい、月森?」 「っ、ぁ、はい」 珍しくぼぉっとしていた月森が梅谷先生に言われて素早く動き窓を開け始め、新鮮な空気が部屋へと入り込んできた。 「寒いな、ハル」 はだけた着物を直してやり、脱がされていたジャージを着せてやる。 そのまま横抱きにして立ち上がった。 「おい月森、後は頼んだ」 「あの子の事は、もういいんですか?」 「ハッ、あんな何言ってるかわかんねぇ異常者相手にするよりこっちの方が遥かに大事だ。それに、さっき佐古が思いっきり殴ったしな」 「ククッ、正しい選択だなぁ龍ヶ崎。行って小鳥遊休ませてやれ」 「お願いします、先生」 そのまま素早く部屋の外へ出る。 「会長! ハルは ーーっ」 「……ハル、様………」 「っ、」 俺の腕の中でぐったりとしているハルを泣きそうな目で見つめている奴らに「大丈夫だ」と告げる。 「櫻さん、このまま俺の部屋に運ぶので」 「わかり…ました……っ」 「お前らも、文化祭終わったら訪ねて来い」 「「……っ、はい………」」 ガチャッと寝室のドアを開け、ゆっくりとハルを下ろした。 「はぁ……ぁ、レ、ヤ…っ」 「ん。ここにいる。 ちょっと待ってろ、何か拭くもん持ってくっから」 パッと離れ、素早くタオルを引ったくって再度戻る。 「ハル、着物脱がすからな」 ゆっくりと帯を外して、パサリと綺麗な着物を脱がして。 (ーーっ、くそが) ハルの体に付着しているネットリとしたものを拭き取ろうと、その部分にタオルを押し付けた、瞬間。 ビクッ 「っ、ぁ、ゃあぁ…っ」 「ん、何だハル?」 「ゃ、めて…ぁ、つくなる……から…っ」 (熱く……?) まさか、 「ハル、体が熱いのか?」 「…ん、ぁ、つぃ……」 「っ!」 やはり、あの部屋で嗅いだ甘ったるい匂いは媚薬か何かだったか。 (あの野郎…ハルに盛りやがって……!) やっぱ、一発殴っとくべきだったか。 「レ、ヤ……こわぃ…っ」 「自分の体が熱いのが、怖いのか?」 「……ん」 力が入っていない体で弱々しく頷かれる。 「そうか、わかった。 どうにかしてやるから、まずは体拭かせろ」

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