261 / 533

sideアキ: そして、それは突然に

ガラッ! 「ーーーー小鳥遊」 「? 梅谷先生……?」 「ちょっとついて来い」 「は、はぃっ」 いつもの授業中、突然呼び出された。 早足で進む先生の後を、懸命に追う。 「ど、どうしたんですか?」 「さっき、お前の家から電話が掛かってきた。 ーーお前に、直ぐに屋敷へ戻って来て欲しいらしい」 「ぇ…………」 (なんで) だって、帰って来てからまだ2週間経ってないのに。 「小鳥遊は…何か言ってましたか……?」 「いや、何も。ただお前を迎えに行くと電話があっただけだ。 屋敷でなんかあったんじゃねぇのか…?」 「屋敷で……何か………」 『アキのわからずや!もう知らない!!』 『俺だって、ハルのこと、もう知らない!!』 (っ、まさかーー) 「……どうやら、心当たりがあるみてぇだな。迎えはもう門の外に着いてるようだから、そのまま行け。カバンは佐古に持ち帰らせるから」 「は、はぃっ」 「気をつけろよ」というように背中をポンッと押され、そのまま校門へと急いだ。 (早く…早く着いて……っ) 静かな車内で、カタカタ震えだす両手をぎゅぅっと握り締める。 『どうやら、心当たりがあるみてぇだな』 心当たりなら、ある。 ーーハルとの喧嘩だ。 ハルと、初めて喧嘩をした。 俺は、その後レイヤの両親に話を聞いてもらって何とか落ち着くことができた……けど。 (ハルは…ハルは、どうしたんだろ) 誰か、話を聞いてくれる人…いただろうか? 心を…落ち着けることができただろうか? (もし…もし、ずっとあのまま、悩んでたら……) ーーハルは…今頃倒れているのかも、しれない。 「っ、」 ヒヤリと心臓が冷える。 (ど、しよ……) 倒れてはいなくても、熱が出ているかもしれない。 苦しんでいるかもしれない。 俺が、ちゃんとしとくべきだった。 体が弱いハルを、気遣うべきだった。 (っ、ハル……ハルごめん………っ) 呼び出されるという事は、多分事態は最悪のはず。 『アキっ』 (ハル……っ) ハルに何かあったら、俺はーー 「っ、お願いします、急いでくださいっ!」

ともだちにシェアしよう!