306 / 533

sideハル: ハローただいま、僕の家

バタンッ 「じゃあ、俺たちは車の中で待機してるから。 なんかあったらすぐ連絡しろ。いいな」 「わかりました」 「気をつけてくださいね。状況が状況でしたら、私たちもすぐに駆けつけますので」 「有難うございますっ、櫻さん」 「行ってくるね梅ちゃん先生!!」 「はぁぁぁ…丸雛、お前ちゃんと携帯握りしめとけよ?」 「なっ、へ、平気だもん!」 「ふふふ。皆さん、本当にお気をつけて。 ーーご武運を」 「「「はい!」」」 先生たちを車へ残し、4人で向かう。 今回、先生たちはあくまでも僕たちの保護者のような役割を選択してくれた。 『なんかあった時の責任は全部俺たちが取ってやるよ。だから、思う存分暴れてこい』 『私たちはこの中では唯一の大人であり先生ですからね。あぁ心配は無用ですよ、大丈夫です。皆さんは皆さんの事をしっかり考えて』 そう言って、僕たちが動きやすいように学園へ色々な嘘をつき隠してくれた。 今日も、平日にもかかわらずこうして梅谷先生の運転する車で外に出れているのは、先生たちがまとめて出してくれた外出許可書のおかげで。 (本当、ありがたいなぁ) 先生たちにタイラに…色んな人たちのサポートがあって、今僕らはこうして立てている。 「ハル様、体調の方は大丈夫ですか?」 「有難うございます先輩っ。元気です」 「クスッ、それは良かったです」 隣を歩く月森先輩が、僕の緊張を落ち着かせるようゆっくりと背中を撫でてくれた。 アキのとこには、今レイヤが行っている。 ーー僕たちも、頑張んなきゃね。 たどり着いた屋敷の門。 モニターを押すと、すぐにメイドが出てくれた。 『っ、ハル様!? 一体どうして……』 「ふふふ、ちょっとね。ねぇ、開けてくれない?」 『はい、すぐに!』 やがてキィ……と古びた音を立て、門が開いた。 「うわぁ…立派なお屋敷だね……流石小鳥遊」 「庭も見事だな」 「うーんそうかな、有難う」 チラッと後ろを見ると、微かに震えるイロハの手をカズマが力強く握りながら歩いている。 こんなことに巻き込んで、本当にごめんね。 でも、それでも今、こうして協力してくれてるんだ。 (絶対、勝たなきゃ) 玄関の扉を開けると、既に出迎えのため沢山のメイドが並んでくれていた。 「ハ、ハル様…この方々は?」 「僕の学園の友だち。一緒に帰って来ちゃった。 ねぇ、父さんたち今屋敷にいるよね? 何処?」 「だ、旦那様方は……っ」 外部の者たちも来ている中、教えてもいいのかとメイドたちが視線で会話をしている。 「うーん。教えてくれないなら自分たちで探すからいいよ」 「えっ」 「そんなっ、ハル様方少々お待ちください。今旦那様に面会の許可を取ってまいりますのdーー」 「その必要は御座いませんよ」 柔らかい中にも芯のあるような声が、玄関に響いた。 「ーー月森、さん」 「お帰りなさいませ、ハル様。ようこそいらっしゃいました、ご友人の方々」 ニコリと笑って出迎えてくれたのは、もう随分長いこと会ってなかった我が家の月森さんで。 「社長は既にお待ちでらっしゃいます。部屋までご案内しますので、どうぞこちらへ」 幼い頃会っていた時と同じようにニコニコしながら、ゆっくりと僕のペースに合わせ誘導してくれる。 チラリと隣の月森先輩を見ると、その視線は真っ直ぐ月森さんの背中へ注がれていた。 確か、先輩の叔父さん…なんだよね。 今、2人はどんな気持ちなんだろうか? (まぁ僕は月森じゃないし、わからないけど) でも、次はこんな形で再開する事を…もしかしたら月森さんの方は知ってたのかもしれない。 父さんが仕事等でよく使ってる、屋敷の一番奥の部屋。 そこに案内され、月森さんがコンコンと扉を叩いた。 「ーーそれでは、どうぞお入りください」 ガチャリ…と、ゆっくり扉が開かれる。 「やぁ。久しぶりだね、ハル」 「っ、父さん」 部屋に入ると、椅子に座った父さんが出迎えてくれて。 パタンッと月森さんが扉を閉め、父さんの斜め後ろ……幼い頃と変わらない、いつもの定位置へと立った。

ともだちにシェアしよう!