307 / 533
sideイロハ: 小鳥遊との、対峙
通された部屋には小鳥遊社長と小鳥遊の月森さんのみが居て、奥様は居なかった。
これが、小鳥遊の社長。ハルとアキのお父さん……
2人とよく似た瞳の色をした、スラリとした人。
優雅に椅子に座り足を組んでいるその姿は、この状況を楽しんでいるように見える。
「ふむ…成る程……」
じっくりとおれたちを見てニコリと笑った。
「やはり、此処へ来たのは君たちだったか。
丸雛と矢野元の息子。それから月森の子」
「「っ、」」
おれたちのことを、既に知ってる……
「レイヤくんは、アキのところへ行っているのか?」
ーー全て、もうバレている。
〝父さんは腹の底が見えない〟と、ハルが何度も言っていた。
(本当に、全然見えない……っ)
この人は、おれたちのことを何処まで知ってるの……?
「クスッ。
知ってらっしゃるのなら話は早いですね、父さん」
真っ直ぐに、ハルが一歩前へ出た。
(っ、そうだ……)
こんな事で、怯んじゃいけない。
おれは…おれたちは、アキを取り戻すんだ。
ーーその為に、ここまで来たんだ。
ハルと同じように一歩前に出ると、「ほぉ」と社長が軽く目を見開く。
そして面白そうにクスリと笑った。
「君たちの要件を聞こうか」
「僕たちの要件は、ただひとつです」
アキを、
「アキを小鳥遊の子として、正式に告知してください」
「ふむ。どうして?」
「〝どうして〟……? 貴方は、この状況がおかしいとは思わないのですか?」
「家族にはいろいろな形がある。私たちにとっての形は、これなんだろう」
「っ、そんなのおかしい!」
思わず、ハルと社長の会話に口を挟んでしまう。
(でも…おかしいものはおかしい……!)
「家族は、誰かの犠牲の上に成り立っちゃいけないものですっ!」
家族とは、そこに属した人全てが心置きなく安心して過ごせる場所のことだ。
それなのに、小鳥遊の家族の形は…誰かしらがもうずっと悲しい思いをしてる。
(そんなのは、おかしいよ……)
ポンッと背中に知ってる体温が触れた。
「俺も同じ意見です。
小鳥遊は、アキにばかり辛い思いをさせているように見える。一体なぜこんな事になっているんですか?」
(っ、カズマ……)
「〝母さん〟だよね? 父さん」
ポツリと、ハルが社長に問いかける。
「〝母さんがアキを嫌ってる〟。
だから、アキを正式に息子だと告知することが出来ない。
そうだよね?
ーーねぇ、父さん。教えて欲しいんだ」
ハルが月森先輩と共に、もう一歩前へ出た。
「母さんは、どうしてアキを嫌っているの?」
ずっと…もうずっと飲んでる、あの薬は何……?
「母さんは、何の病気なの?」
ともだちにシェアしよう!