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sideイロハ: 小鳥遊との、対峙

通された部屋には小鳥遊社長と小鳥遊の月森さんのみが居て、奥様は居なかった。 これが、小鳥遊の社長。ハルとアキのお父さん…… 2人とよく似た瞳の色をした、スラリとした人。 優雅に椅子に座り足を組んでいるその姿は、この状況を楽しんでいるように見える。 「ふむ…成る程……」 じっくりとおれたちを見てニコリと笑った。 「やはり、此処へ来たのは君たちだったか。 丸雛と矢野元の息子。それから月森の子」 「「っ、」」 おれたちのことを、既に知ってる…… 「レイヤくんは、アキのところへ行っているのか?」 ーー全て、もうバレている。 〝父さんは腹の底が見えない〟と、ハルが何度も言っていた。 (本当に、全然見えない……っ) この人は、おれたちのことを何処まで知ってるの……? 「クスッ。 知ってらっしゃるのなら話は早いですね、父さん」 真っ直ぐに、ハルが一歩前へ出た。 (っ、そうだ……) こんな事で、怯んじゃいけない。 おれは…おれたちは、アキを取り戻すんだ。 ーーその為に、ここまで来たんだ。 ハルと同じように一歩前に出ると、「ほぉ」と社長が軽く目を見開く。 そして面白そうにクスリと笑った。 「君たちの要件を聞こうか」 「僕たちの要件は、ただひとつです」 アキを、 「アキを小鳥遊の子として、正式に告知してください」 「ふむ。どうして?」 「〝どうして〟……? 貴方は、この状況がおかしいとは思わないのですか?」 「家族にはいろいろな形がある。私たちにとっての形は、これなんだろう」 「っ、そんなのおかしい!」 思わず、ハルと社長の会話に口を挟んでしまう。 (でも…おかしいものはおかしい……!) 「家族は、誰かの犠牲の上に成り立っちゃいけないものですっ!」 家族とは、そこに属した人全てが心置きなく安心して過ごせる場所のことだ。 それなのに、小鳥遊の家族の形は…誰かしらがもうずっと悲しい思いをしてる。 (そんなのは、おかしいよ……) ポンッと背中に知ってる体温が触れた。 「俺も同じ意見です。 小鳥遊は、アキにばかり辛い思いをさせているように見える。一体なぜこんな事になっているんですか?」 (っ、カズマ……) 「〝母さん〟だよね? 父さん」 ポツリと、ハルが社長に問いかける。 「〝母さんがアキを嫌ってる〟。 だから、アキを正式に息子だと告知することが出来ない。 そうだよね? ーーねぇ、父さん。教えて欲しいんだ」 ハルが月森先輩と共に、もう一歩前へ出た。 「母さんは、どうしてアキを嫌っているの?」 ずっと…もうずっと飲んでる、あの薬は何……? 「母さんは、何の病気なの?」

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