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乾杯…したはいいけど…… (全然食えない…) そうじゃんか、さっき家でめいっぱい食べてきたじゃん。 「ハル、調子悪いの?」 「いやっ、もうお腹いっぱいで……」 緊張とかで喉通らないんじゃなく、本当にお腹がいっぱいなんです。 だから心配しないでと笑うと、みんな「そっかぁ」と頷いてくれた。 (ってか、) 「ねぇ、佐古くんは?」 「あぁ…佐古くんはねぇー……」 「今頃何処かへ行ってるんじゃないですかね?」 「? どうして?」 一緒に楽しめば良いのに。 こんなに賑やかなのになぁ。 「実は、最近佐古くんの親衛隊を作ろうとしている動きがあるんです」 「えぇ!?」 「それで、今もこうして来れないんだ。此処には全校生徒がほぼほぼ集まってるからな」 (なんと……) マジかよ佐古、お前大変だな。 でも、どんな顔して佐古が逃げてるのかを想像すると凄く笑えてきて。 「ちょ、ハル笑わないっ!」 「ごめっ、だって……っ」 (絶対仏頂面でイライラしてるはず) それか苦虫を噛み潰したような顔で逃げてるか… どっちにしても面白くない? え、俺も見たい! 「クスクスッ、やはり」 「お前は〝ハル〟だな」 「? 先輩、カズマ、それどういう意味……?」 「「そのままの意味」」 「??」 取り敢えずその佐古の話がもっと聞きたくて、みんなとわいわい楽しく話した。 「さて、そろそろですかね?」 「そうですねっ」 「ん、どうしたの?」 みんながそれぞれ持っていた食器類をテーブルに置き始めた。 「ハルっ、ほらおいで!」 「ハル、手」 まるでいつかと同じように、2人から差し出される手。 「ーーっ、ふふ、なんだか懐かしいね」 右手をイロハに、左手をカズマに取られてゆっくり歩き出す。 「あの時は、おれ怒鳴っちゃったんだよねぇ」 「そうだな。初対面だったのに早々やってしまったな」 「クスッ。でもあれが無かったら、今は無いよ」 〝迷惑でも何でもないのっ! ハルが無理しておれたちに合わせたり遠慮したりするほうがもっと迷惑なの!!〟 〝友だちってそういうものじゃないのか? どちらか一方が我慢して関係を築くのは違うと思う。 だから、俺たちはハルに無理してほしくない、本当に〟 ーーあの言葉が無かったら、正直友だちの意味を履き違えたまま、ずっと生活してたと思う。 あの言葉があった…あの場面でそれを真っ向から怒って教えてくれた2人がいたからこそ、俺たちには〝今〟があるわけで。 だから、 「本当にありがとう。 イロハ、カズマ」 (2人とも、本当に大好きだ) 大好きで大切で、ずっと一緒にいてほしいと思うくらい…そのぐらい、大事な友だち。 「ーーっ、そんなのおれたちこそ!」 「これからもよろしくな、 ………っ、」 俺の名前が、呼びたいのだろうか? 「今この瞬間に呼びたいのに、呼べないのが悔しい」というように2人の顔がクシャリと歪んで。 それだけでも十分嬉しくて、繋いだ手にキュッと力を入れて笑った。 「こちらですよ」と誘導してくれる先輩とタイラの後をついて、再び外へ出るとーー 「あれ、佐古くんっ?」 「………よう」 会場にいなかった佐古が、扉にもたれかかっていた。 「それでは、後はお願いしますね」 「分かった」 「行ってらっしゃい」「楽しめよ」 そっと2人の手が離れていく。 「ぁ、待って!先輩今なら大丈夫ですよね…?」 「えぇ、大丈夫です〝アキ〟様」 今ここには俺たちしかいないけど、念の為先輩へ確認を取る。 何となくこれから佐古と一緒に何処かへ行くんだという事が分かって、慌てて持ってきた袋をガサガサ漁った。 「はいこれ、3人に」 イロハとカズマとタイラへ作ったのは、手袋。 いつも沢山手を繋いでくれる3人だからこそ、これを渡したかった。 「わぁ!これ…手作り!?」 「凄いな、綺麗に編めてる」 「そ、そんなっ、手作りを貰えるなんて…!ぼ、僕嬉しすぎてどうにかなっちゃいそうです……っ」 (良かった、喜んでもらえた…) ホッと息を吐く。 「はいっ、おれたちからもこれ!」 「ぇ、わぁ!」 ラッピングされたキラキラしてる袋が、お返しというように手渡された。 「「「メリークリスマス、アキ」」」 「ーーっ、みんな…ありがと」 嬉しくて嬉しくて、ぎゅぅっと貰ったものを抱きしめる。 「さぁ、早くしないと誰かが来てしまいます」 「っ、そうですね。行こう佐古」 「あぁ」 「みんなありがとう!先輩もありがとうございました」 「クスッ、お気をつけて」 「じゃぁねアキっ!」 「風邪ひかないようにな」 「防寒対策しっかりなさってくださいね!」 「うんっ!!」 大きく手を振りあって 今度は佐古と一緒に、歩き出したーー

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