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「うん。お母さんには寂しい思いさせちゃうかもしれないけど…でも、おれは卒業までみんなと一緒にいたいんだ。お願い」 「ふふ、カズマくんの他にも仲良い子をつくれたのね。いつもベッタリだったのにね〜」 「うんっ、みんないい人だよ」 「学校嫌なんて…言ってない? ちゃんと毎日行ってる?」 「勿論!カズマとハルとアキと、先輩と会長と先生たちと、あとタイラちゃんっていう子もいるんだっ。それと佐古くんも!もう引きこもったりしてないよ」 「クスクス、そう。元気に行くのは偉いことだけれど、無理は駄目よ? きつかったらしっかり休みなさいね?」 「ーーっ、はい!」 (これからは、もっと実家に帰ってこよう) ハルみたいに2週間に1度とか、月に1度とか。 わたしのこと心配してくれてた家の人たちに、会いにこよう。 お母さんにも出張の回数を減らしてもらって、もっと一緒に過ごす時間を作ろう。 それから、スズちゃんも…… (月森先輩に、後で聞いてみよう) お母さんだって多分心配してる。 ずっと隣にいた人が、いないんだから。 「カズマくん」 ぼくを抱きしめたまま、お母さんがカズマの方を向く。 「イロハとずっと一緒にいてくれて、ありがとう。カズマくんや矢野元の皆様には、いつもいつも迷惑かけてばかりね」 「いいえ、お隣なんですから頼ってください。別にお礼を言われることではないです。 それに、幼い頃約束したじゃないですか」 『カズマくん。イロハのこと守ってあげてね?』 『うんっ!!』 「これからもずっと、俺はイロハの隣にいます」 「っ、えぇ。そうね。 ーー皆さんも」 ふわりと、また長い髪が揺れた。 「この子の為ここまで来てくださって、本当にありがとう。 これからも、どうぞイロハをよろしくお願いします」 「「っ、はい!!」」 元気な、嬉しそうな双子の声。 「〜〜〜〜っ、お母さん!!」 「わぁっ!」 嬉しくて嬉しくて、同じくらいの身長にさっきよりも力を入れて抱きついた。 壁を作ってたのは、おれのほうだった。 自分のことを女と思ってるお母さんが怖くて、なんて話していいのかわからなくて。 ついつい…自分から距離を置いてしまっていた。 お母さんは離れていても、1番におれのことを考え両手を広げてくれてたのに。 (でも、それに気づけて良かった……っ) きっと きっともう大丈夫。 もしまた何処かでズレが生じたら、その時はちゃんとこうして口に出そう。 そしてまたこうやってぶつかって…一歩一歩解決していこう。 だって家族って、そういうものでしょう……? 「さぁっ!湿っぽい話は終わりにしましょうか。折角用意したお茶とお菓子が台無しだわ。 イロハ、学園へ帰るのは明日でいいでしょう? 皆さん今日は是非うちに泊まってください。昨日は矢野元さんの所だったのでしょう? 今夜は丸雛がご馳走しますから、ゆっくりされて明日皆さんで戻られてください」 「「わ、いいんですか?」」 「ククッ、どうする?」 「ぇ、と、泊まりたい…!」「僕も!」 「ふふふ、決まりですね。丸雛社長、お世話になります」 「よろしくお願いします」 「勿論っ。今日は美味しいもの準備しなくちゃね〜イロハも手伝って!」 「っ、うん!」「俺も手伝います」 それから、物静かで冷たい雰囲気が漂っていたわたしの家は、一気に活気付いたよう動き出して。 メイドさん達もみんなみんな、嬉しそうにハル達の部屋の準備をしてた。 「俺たちもなんか手伝った方が…」って言ってくるアキ達をなだめて、大人しく座ってもらって。 久しぶりにお母さん達と並ぶキッチンは、楽しくて楽しくてしょうがなかった。 食卓にはあっという間に沢山の料理が並んで、みんな目をキラキラさせながら「美味しい!」と食べてくれて。 (まさか、おれの家でみんなとこうやって笑って過ごせるなんて) 夢なんじゃないかな? って何度も何度もほっぺをつねってしまって、その度にカズマに笑われて。 本当に本当に、夢のような…… そんな、楽しい幸せな1日になったーー

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