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その5: レイヤが嫉妬する話 1

--------------------------------------------------------- ◯リクエスト アキとハルの仲が良すぎてレイヤが嫉妬する話を。 --------------------------------------------------------- 【side レイヤ】 いや、分かる。 こいつらは双子だし、家庭環境ってのもあって普通の兄弟よりも仲がいい。 分かってる。分かってんだそんなことは。 だがーー 「ハ、ハルくすぐったっ、」 「あはははっ、アキ可愛いー!」 (……いい加減、ちょっと仲よすぎじゃね?) 事の発端は、たまたま没収した物。 生徒会室へ行く途中で何か隠し持ってる連中とすれ違ったから、回収して来た。 『ん? レイヤ何持ってるの?』 『あぁこれか?これはーー』 それにハルが興味を持って。 『わぁ可愛い!僕初めて見たよ!! 新品……なんだよね?』 『だろうな、開けた形跡ねぇし。 ったく…学校にこんな物持ってくるやつがあるか、馬鹿馬鹿しい』 『クスクスッ、へぇ……ねぇ!これからアキくるよね? これさ、』 コンコンッ 『レイヤ? ハル?』 『わーいナイスタイミング!!』 『は? ちょ、おいハルっ』 手渡した物を持って、ハルはそのまま嬉しそうに扉を開けやがった。 それから、現在。 (俺は何やってんだ?) 「はぁぁぁ………」 生徒会長の椅子で深くため息を吐きながら、楽しそうにソファーでじゃれあってる2人を見る。 「ははっ、ハル、も、タイムタイム!」 「え〜どうしよっかなぁ〜〜」 (俺はどうしてあれを回収して来たんだ……) 回収した物…それは犬の耳が付いたカチューシャとふわふわの尻尾だった。 ご丁寧に袋を被ってたから、開けられてないし汚れちゃいねぇ。だが何に使うかは明確。 何でこんなもん学校に持って来てんだ? 謎すぎんだろ。 犬の耳が付いたカチューシャは、今アキの頭でぴこぴこ揺れている。 尻尾はハルが持ってて、それでアキをくすぐっていて。 「チッ、」 普通の奴がみたら眼福なのかもしれない。 けど俺はその光景か面白くなくて、舌打ちが漏れた。 なんて顔してんだあいつは。 くすぐられすぎて涙目になってやがる、俺の前以外でそういう表情するんじゃねぇ。 しかも馬乗りにされやがって。 いくら仲がいいっつったって、同じ顔に攻められてんじゃねぇよ。 「っ、くそ」 今日は苛々が止まらなくて、腹の底が煮えくりそうだ。 元々放課後生徒会室へアキを呼んだのは、ハルだった時の業務をハルに引き継いで貰うため。 だから今この部屋には3人しかいないし、部外者のアキを部屋へ入れている。 だが、この状況はなんだ……? 業務は愚か、アキは隣にいない。 しかも何故かハルに攻められて涙目。 はっ、意味わかんねぇな。 いい加減にしやがれよ…… 俺は元々気が長い方ではないし、我慢強いこともない。欲しいと思ったら即行動、待つという事をしてこなかった人間だ。 だが、アキと出会ってからは多少待つ事を覚えた。あいつの気持ちを尊重して、独占せずにハルとの時間だって作ってやってる。 もう十分だろ。 自分が丸くなりすぎて気持ち悪りぃ、そろそろアキを返しやがれ。 ゆらりと席を立ってあいつらのところへ行こうとした……瞬間 「ね、これ直接くすぐったらどうなるのかな?」 「へ? って、ハル待っ!」 「ーーっ!」 ハルの手がシュルリとネクタイを解き、シャツをめくろうと動く。 それを素早く叩き落とした。 「いっ!!」 「ハル!? ちょ、レイヤ……!」 ガバリと起き上がって俺を睨み、アキはそのまま手を抑えたハルの顔を覗き込む。 ポツリ 「っ、なんで……」 「え…なに……?」 ーーなんでそんなにハルを優先するんだよ、てめぇは。 知ってる、なんでなのか。ちゃんと。 それでも…今はそれに物凄く腹が立って 「………チッ、クソ」 「レ、レイヤ!? ちょっと待っ」 あいつらを残したままバタン!と扉を閉め、生徒会室を後にした。

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