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その6: アキが嫉妬する話 1
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◯リクエスト
アキがレイヤに嫉妬する話を。
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※その5の後の時間軸です。
【side アキ】
「ぁ、あの…会長…… 好きですっ!!」
(は………?)
それは放課後。
何となく今日はレイヤと一緒に帰りたいなと思って、生徒会の業務が終わるのを待っていて。
そろそろ迎えに行こうかと生徒会室へ向かった矢先の事。
(ぇ、何あれ……)
思わず壁に隠れて様子を伺う。
あれは…先輩……かな?
ネクタイの色が青色だから3年生だ。
可愛らしい顔をした小柄な先輩が、一生懸命レイヤを見上げていた。
「ぁの、ぼ、僕ちゃんと知ってるんです。小鳥遊くんが会長の恋人で…婚約者だって……でも、どうしても想いを伝えてから卒業したいと思って、それでっ」
黙って話を聞いているレイヤの顔は、ここから見ることができない角度。
一体どんな顔してんだろ、あいつ。
無表情? 真剣?それとも……優しく笑いながら?
ーーツキン
(ぁ………)
何故か心が鈍く痛んで、キュゥッと服を握る。
「こ、これ、貰ってくださいっ!」
そんな中パッと差し出されたのは、白い封筒
多分、ラブレター。
受け…取る、の?
それ、受け取るのレイヤ……?
じぃっと見てると、不意にレイヤの腕が動き出す。
そしてーー
「っ、ぁ…………」
手紙を先輩の手から受け取って、「ありがとう」と言ってる声が……聞こえた。
「っ、」
もう…見てられなくて
音を立てずに、そっとその場を後にした。
「アキ、どうしたの?」
あれから結局1人で寮まで帰って来て、何もする気が起きずソファーに沈んでいる。
「熱…があるわけでもないね。気分悪い?」
「ハル……」
「元気のないアキさん、よしよし」
隣に座ったハルに手を伸ばしたら、直ぐにふわりと抱きしめてくれて。
その首元に顔を埋め、ぎゅぅっと目を瞑った。
さっき見た光景が、どうしても頭から離れない。
レイヤ…あの手紙をどうするのかな……
読むのかな、読むんだろうな。
その後はどうするんだろう…大切に取っとく?
もし、その手紙でレイヤの心が変わってしまったらーー
「っ、」
(ゃだ…嫌……)
怖くて怖くて、でもすんなり受け取ったレイヤに何でか腹が立って、お腹の辺りがぐるぐるする。
「……ね、アキ。
もしかしてさ、レイヤの事で悩んでる?」
「ぇ、」
「あ、やっぱり?」
体を離したハルがクスクス笑ってた。
「何となくそんな感じがしたんだよね。んーそうだなぁ。
レイヤはアキがそんな顔して何かを悩んでること、知ってるの?」
「…知らないと思う。今日だって結局1人で帰って来たし……何も言ってない」
「そっかぁ……うん。
それなら、先ずは話し合わなくちゃね!」
「へ? …って、ぅわ!」
両手を引っ張られパッと立たされる。
「ほらっ、アキ今日はレイヤの部屋泊まっといで? また明日の朝会おっか」
「ぇ、ちょ、ハル?」
「ふふふ、アキだってもう分かってるよね? そうやって1人で悩んでても駄目だなぁって。
行っておいでよ。追い返されることは無いと思うし、きっと大丈夫だよ。もし追い返されても僕がガツンと言ってあげるから!」
「っ、ハル……」
グイグイ背中を押されて、玄関まで来てしまって。
ポソッ
「まぁ前回は僕がレイヤ怒らせちゃったしね。これでチャラかな?」
「なにハル? なんか言った?」
「んーんなんにもっ!
早く解決させといでアキ。そうやっていつまでも悩んでると、レイヤもみんなも心配しちゃうよ?」
「っ、ぅん……」
確かにそうだ。
そうなんだけど…でも、この気持ちをなんて伝えればいいかわからない。
自分でもよく分からないのに、それをどう口にすればいいのだろうか……?
悩んでる間にもハルにどんどん気圧されて、靴を履く。
「じゃあアキ、いってらっしゃい!」
「は、はぃ…行ってきます……」
笑顔で手を振るハルにぎこちない笑みを浮かべ、結局よくわからないままガチャリと扉を開けたーー
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