438 / 533

4

「今もね? ハルがいつもぎゅぅってしてくれるんだ! すごくあったかくてしあわせになるの」 心がポカポカして、自然と笑顔になれてしまう。 「それがね、もっとふえたらいいなって思うんだぁ……」 ハルだけでも十分幸せ。 でも時々…本当に時々、どうしようもなく寂しい時がある。 例えば、おかあさんがハルを抱きしめる時。 おとうさんがハルに笑いかける時。 何故だか寂しくなってしまって…心がキュっとなってしまって…… 「おかしいねっ、ハルがいてくれるのに。 でもね? そういう時におれのことぎゅってしてくれる人がいたらなぁって…おれもその人のことぎゅってしたいなぁってね、思うの。 ひとりでいいんだ。おれの名前をよんで、おれをぎゅってしてくれる人が、ハルのほかにもいてくれたらーー」 グイッ!! 「わぁっ、……サンタ、さん?」 (あぁ、小せぇなぁ) 小さい 小さい こいつの体。 きっと、俺と出会うのはまだずっと先のこと。 「サンタさん…? どうしたの……?」 ビクリと震えた背中を、窓越しに抱きしめた。 「……ふふふ、もしかしてサンタさんがプレゼントになってくれるの?」 「…あぁ、そうだな」 「わぁっ!すごい!!」 キャッキャっと腕の中で喜ぶこいつを、更に強く抱きしめる。 多分もうすぐ、俺はこの時間線じゃなく元の場所に戻る。 常にこいつの近くにいるわけじゃない、これが現実か夢かもわからない……そんなひと時の時間。 それなのに、こいつは「嬉しい」と笑っていて。 (ーーっ!) ポツリ 「なぁアキ、待ってろ」 「……へ?」 お前のその願いは、絶対叶う。 まだ遠い先の話だろうけど、必ず叶う。 俺が叶えてみせる。 「ひとりでいい」とか言ってんじゃねぇよ。 丸雛や矢野元や佐古や、月森だって、お前の事呼んで抱きしめてくれる奴はたくさん出来る。 ーーそんな未来が、来るから。 (その願い、絶対に捨てんなよ……っ) 今は、叶えてやる事は出来ない。 その歯がゆさがどうにも胸にきて、苦しくなった。

ともだちにシェアしよう!