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「今もね? ハルがいつもぎゅぅってしてくれるんだ!
すごくあったかくてしあわせになるの」
心がポカポカして、自然と笑顔になれてしまう。
「それがね、もっとふえたらいいなって思うんだぁ……」
ハルだけでも十分幸せ。
でも時々…本当に時々、どうしようもなく寂しい時がある。
例えば、おかあさんがハルを抱きしめる時。
おとうさんがハルに笑いかける時。
何故だか寂しくなってしまって…心がキュっとなってしまって……
「おかしいねっ、ハルがいてくれるのに。
でもね? そういう時におれのことぎゅってしてくれる人がいたらなぁって…おれもその人のことぎゅってしたいなぁってね、思うの。
ひとりでいいんだ。おれの名前をよんで、おれをぎゅってしてくれる人が、ハルのほかにもいてくれたらーー」
グイッ!!
「わぁっ、……サンタ、さん?」
(あぁ、小せぇなぁ)
小さい 小さい こいつの体。
きっと、俺と出会うのはまだずっと先のこと。
「サンタさん…? どうしたの……?」
ビクリと震えた背中を、窓越しに抱きしめた。
「……ふふふ、もしかしてサンタさんがプレゼントになってくれるの?」
「…あぁ、そうだな」
「わぁっ!すごい!!」
キャッキャっと腕の中で喜ぶこいつを、更に強く抱きしめる。
多分もうすぐ、俺はこの時間線じゃなく元の場所に戻る。
常にこいつの近くにいるわけじゃない、これが現実か夢かもわからない……そんなひと時の時間。
それなのに、こいつは「嬉しい」と笑っていて。
(ーーっ!)
ポツリ
「なぁアキ、待ってろ」
「……へ?」
お前のその願いは、絶対叶う。
まだ遠い先の話だろうけど、必ず叶う。
俺が叶えてみせる。
「ひとりでいい」とか言ってんじゃねぇよ。
丸雛や矢野元や佐古や、月森だって、お前の事呼んで抱きしめてくれる奴はたくさん出来る。
ーーそんな未来が、来るから。
(その願い、絶対に捨てんなよ……っ)
今は、叶えてやる事は出来ない。
その歯がゆさがどうにも胸にきて、苦しくなった。
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