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「ハ、ル…ちゃん? なんで……」
明るい部屋の中で、目をまんまるに見開いた先生。
「…っ、ふふ、はははっ」
すごい、こんな顔初めて見た。
傑作すぎて、もうこれだけで来た意味あると思う。
「や、ちょ、笑い事じゃないから!なに? 幻覚!?」
「あはははっ、幻覚とかやば…最高……っ」
立ち上がった先生が慌ててカーテンを閉め、ドアにカチャリと鍵をかける。
そのまま手を引かれて、今まで仕事をしてた机付近に連れていかれた。
「どうやって来たの? 誰に加勢してもらった? 来たかったなら僕が迎えにいったのに。というかこのコートなに? フードまで被って寒いんでしょ、風邪でも引いたらどうするの? すぐ暖かくしない…と……」
矢継ぎ早に聞いてきた先生が、ハッと止まる。
「今日って…たしか……」
「…先生、僕のスケジュール把握してるの怖すぎ」
後夜祭のこと、一言も言ってないのにな。
驚く先生の前で一つひとつコートのボタンを取っていく。
物音ひとつ立たない、静かな部屋。
さっきまでの緊張が一気にきて手が震えるけど、それでも止めることなく進める。
そうしてボタンを全部取って
フードも脱いで、パサリとコートを床に落としてーー
「…………ぇ」
出てきたのは、白。
真っ白い純白のローブをワンピースのように着て、その下には白シャツと膝上の白ズボン。
ローブには透明の糸で繊細な模様が描かれていて、それが明かりに照らされキラキラ光っている。
背負っていたローブと同じ色のとんがり帽子を被りながら、凝視してる先生にクスリと笑った。
暗い部屋のほうがもっと白く見えるし、月明かりで糸がより綺麗に光って幻想的な雰囲気になるとアドバイスをもらったけど、これでいい。
太陽が昇る真昼のように明るい電球の下で見せたほうが、僕にはきっといいと思う。
あの学園の後夜祭には、仮装の他にひとつ面白い伝統がある。
〝誰か1人にだけ、嘘をついてもいい〟
それを使って普段は言えない本音を言ったり告白をしたり、各々自由に楽しむ。それがこの行事。
(だから 僕は)
「ねぇ、先生」
言葉を発しない長身へ、一歩近づく。
純白の魔女は、嘘をつかない正直者の良い魔女という意味。
だから僕は、素直じゃない僕自身に嘘をついて 騙して
「あなたのことが、好きです」
今日だけ、白い魔女のようになろうと 思う。
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