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第15話 猫可愛がり

 セックスって、したことあるけど、こんなだったっけ。 「あ、ぁっ、久瀬さんっ」 「……」  こんな頭の中が沸騰したみたいになんにも考えられなくなるんだっけ。 「あぁぁぁぁっ!」  ちゅう、って音を立てて、乳首を吸われて、溢れるように声を上げてしまう。口の端から伝い落ちる唾液を久瀬さんの長い指が拭ってくれるのにすら震えるほど感じてる。  甘い声をあげる俺をじっと見て、身体を重さねて、うなじを掌で撫でられると自然に首を傾げた。首にチリって刺さるような痛みが走って、すぐにあやすようにそこを舐められる。きっとそこに、この人の唇の痕が残ってる。首輪みたいに、この猫には主がいるとわかるように。 「あ、久瀬、さっ」  キスは首筋、鎖骨、そして、胸へと移動していく。胸のところは何度も何度も刺激されて、敏感になってた。舐められてると啼いてしまうくらいにそこの感覚が鮮やかでさ。ほら。 「んんんっ、ふ」  ブルリと震えたのは、舌で転がされながら、爪でもう片方を弾かれた瞬間だった。 「あ……ン」  こんな甘ったるい声が自分から零れるなんて。 「クロ」 「……? んんっ」  心臓に近い左の乳首にキスをひとつ落として、久瀬さんが身体をずらした。 「若いなぁ」 「も、からかわないでよ」  もうがちがちになったそれの先端を久瀬さんの、あの長い指がくるくると撫でて先走りを塗りつけた。  握って。 「久瀬、さん」  扱かれて。 「……ンっ」  ずっと、想像してたんだ。あんたの手にイかされることを。あんたに可愛がられることを。 「あぁぁぁぁっ」  なのに、包むように口でされたら。我慢なんてできないよ。 「ぁ、待って、久瀬さん、待って、それっ」  深くしないでよ。あんたの喉んところで俺のこと、しないで。頭の中が真っ白になる。狭くて、あったかくて、こんなの。 「久瀬っ、さんっ」  手を伸ばして、長い黒髪にしがみついた。指を伸ばして、ダメだからって、離してって、力を込めて、でも大好きな人だから丁寧に、髪に掴まって、口を離してって頼んだのに。 「久瀬さんっ」  離してくれない。そのまま、喉んとこ締め付けて、もっと狭いところで亀頭を扱かれながら、さっき初めて与えられた快感で敏感になった乳首を摘まれたら、もう。 「あ、あ、や、ぁあああああっ」  我慢なんてできなかった。大好きな、でも、すごく大事な人の口の中で射精した。 「あっ…………」  ドクドクと、ずっと我慢してた分を全部、だなんて。 「ん、ごめっ」 「気持ち、よかったか?」 「……久瀬さん?」  濡れた指、大きな掌がぴたっと俺の、射精直後で激しく上下する平べったい胸に重なる。あんたの掌だけでも愛撫になるんだ。触れられた、ただそれだけでクラクラするのに。それなのに、なんでそんな困った顔すんの? 苦笑い零してさ、そんで、はぁって、今、溜め息ついた。 「久瀬さん?」 「ここまでなら、女とのセックスでもやることは一緒だ」 「……」  違うよ。一緒なんかじゃない。 「お前、きっと、モテたよ」 「……」 「今ならまだ引き返せるぞ? アキも言ってただろ? 可愛いって。女受けしそうな顔に身体だ。なぁ、今のですっきりしたろ? ここでやめておけ。俺みたいな男となんて」 「知らない」  ねぇ、俺、セックス、したことあるよ。高校の時、大学の時、付き合っていた彼女とセックスしたことある。いや、セックスみたいなものをしたことがある。 「知らないよ。俺はあんたの猫で」  これがセックスなら、あれはセックスじゃない。 「あんたは俺の主、でしょ?」 「……」 「モテたかどうかなんて、いらない」  これが好きって感情なら、あれは、違ってた。 「あんたとしたいんだってば」 「……」 「それに」  心臓、破裂するかと思った。  これがキスなら、今までしたことのあるのは、なんだったんだろう。 「それに、久瀬さんが好きなんだ」  身体を起こして、水辺で水を飲む猫みたいに首を伸ばして、飼い主にキスをした。触れるだけの、挨拶みたいなキスだったのに。全身が痺れたんだ。心臓が壊れそうなほど緊張した。まるで映画に出てくるファーストキスみたいに、ドキドキした。 「クロ……」 「久瀬さんとしたいっ……っン」  心臓、壊れそうだ。  押し倒されて、乗っかられて、喉を開かされるような深いキスを受け止めたら、心臓、壊れる。久瀬さんの重い身体が苦しくて、熱くて、肩にしがみつきながら、自分から口を開いて、舌を伸ばした。 「ン、んって、くせ、しゃっ……」  久瀬さんの口ン中を舌で荒らしたくて。 「ン、んっ」  舌、触らせてよ。 「くぜ、さん……ン」 「……」 「くぜ、さっ」  抱きかかえられると、久瀬さんのが硬くなってるのがわかった。ごりって、してた。俺に反応してる。それを感じてたまらなくなるくらい、したいのに、あんたはまだ俺を諭そうとする。 「いいんだな?」  教えるように、硬く張り詰めた、ペニスを押し付けて、最後の忠告だってさ。 「クロ」 「いいよ」  そんなの忠告になってない。そんなの、抱かれたいとずっと思ってた俺にとっては、ただ嬉しくなるだけなんだってば。  目を見ながら猫が尻尾を絡ませるみたいに、主の首に腕を回して、引き寄せる。 「いいよ……ここ」  そして、脚を開いて、孔の口を見せた。 「クロ、そのまま力抜いてろ」 「ぁ、あっ……」  あの指が。 「あ、久瀬さんっ」  俺の中に入ってくるのを、ずっと待ってた。ずっとこれをされたくて焦がれてた。だから指先が触れた瞬間、あんたの名前を呼ぶ声は熱っぽくて、まるで自分の声じゃないみたいに甘くて切なかった。

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