50 / 106

第50話 意地悪

 ふぅって深呼吸をして。 「新人のボーイさん? 聖司君っていうんだけど、なんか明るい感じの子だった。グラスの種類が覚えられなくてさ」 「……」 「ワインとブランデーは丸いグラスだから区別がつかないんだって」  少しだけ、男二人で一緒に入るには身体を洗う場所は狭くて、先に俺が身体を洗って浴槽へ。今はその湯船の中で、久瀬さんの肩の筋肉を鑑賞してる。執筆に使うのかな。カッコいい腕、肩。この腕に、いつも。 「それで? その新人」 「あ、うん。まだしばらく教えないとダメかも。ちょっと不慣れだから」 「ふーん」  そっけない返事をして、久瀬さんが身体の泡をシャワーで流す。とろりと、肌を伝う白い泡が筋肉の隆起に沿って流れていくのを眺めて。 「若いのか? そいつ、……クロ?」  思わず手を伸ばした。まだ泡が流れきっていない素肌を撫でると、水音が甘いセックスの音に似てた。 「若いよ」 「……」 「顔はカッコよかった、かな。モデルしてたのかと思ったから」 「……ぁ?」 「ヒモ、するのに、見た目大事だからって、言ってたよ。そのくらいカッコよかったから、モデルかと勘違いしたんだ」 「はぁぁ?」  まだ、泡が少し残った肌は艶かしくてドキドキする。 「ヒモをさ、ロープとかの紐だと思い込んでて、俺」  笑ってしまう。紐を何に使うんだろうって、一瞬本当にわからなかったんだから、ちょっと恥ずかしい勘違いをしてしまったって、笑って、湯船を出た。ばしゃばしゃと水音を立てて、洗い場に転々とあった泡の塊がその水飛沫でいくつか消えた。 「おい、クロ」 「顔、カッコよかったよ?」  ねぇ、久瀬さん。 「……あっそ」 「イケメンだったよ」  意地悪をしたのは久瀬さんが先だよ? 「んっ……ふっ、ぁ」  昼間、挿れて欲しかったのに。 「ん、ん」  その場で四つん這いになって、シャワーで泡を流したペニスを口に咥えた。 「ん、っふ」  水を飲んで、もう芯のあった久瀬さんのペニスに丁寧に舌を這わせて、口の中で濡らしていく。舌で、唇で、刺激しながら、朝、この口の中でムクムク育ったペニスに擦られた孔に指を入れた。 「ん、くぜ、しゃ……ン」 「……」 「ぁ、ふっン、ん」 「顔、見せて」 「……っ」  濡れた前髪をかきあげられた。ペニスにキスをしたまま顔を上げると、真っ直ぐ、上から見下ろす主と目が合った。口から離しても、フェラはやめずに、裏筋のところに舌を這わせた。ちろちろと舌先で刺激をしながら根元にキスをする。  久瀬さんのペニスを嬉しそうに、美味しそうに口にする顔を見せながら、自分で孔の口をいじってた。 「あっあああっんんんんんっ」  久瀬さんは目を細め手を伸ばすと四つん這いの俺の乳首を爪先でカリカリ引っ掻く。乳首は朝も可愛がられたから敏感で、思わず腰が揺れてしまった。 「あ、あぁっ……ンぁ」 「クロ」 「朝、言ってた」 「?」  猫らしく身体をしならせ、すり寄ると、その首に腕を巻きつけて、うなじに、首に、耳にキスをする。  やり返すのはよくないと思うよ。でもさ、久瀬さん。それに意地悪をしたのは貴方が先だった。だから、わざと、新しいボーイの彼がカッコいいって何回も言ったんだ。貴方が怒ってくれたりしないかなって。 「また、夜にって」 「……何を?」  意地悪ばかりするんだ。この人は。 「これ……」  でも、舐めてしゃぶった久瀬さんのペニスを握って、先端を掌でくるくると撫でたら、もう少しだけ意地悪をやり返せた気がした。貴方が眉を寄せて、きつそうにしかめっ面をしたから。 「挿れてってお願いしたら、夜にって、言ってた」 「……」 「これ、挿れてって、ぁっ、はぁっ……」  乳首にキスされてペニスの根元がじわりと熱っぽく疼く。欲しいのは、奥のところ。奥の、久瀬さんの。 「あぁっ……ン、それ、ダメ、乳首っ」  久瀬さんのペニスしか届かないところ。 「あっ、ン」 「クロ」 「ぁ、あっ、してっ、久瀬さん」  立ち上がらされて、そのままタイルと向かい合わせになった。右手と右手を重ねて、左手は互いの腰をもっと近くに引き寄せる。 「ぁ、あっ、ああああああああ」  立ったまま、今朝の続きみたいに立って後ろから。一日欲しかったペニスを打ち込まれた。 「あっ……ン、ぁっン」  そのままずるずると引かれて、またヌラヌラと奥めがけて動いて。 「クロ」 「ぁ、あっ、あの、ねっ」  気持ちイイ。ずっと欲しかったんだから、気持ちよすぎておかしくなりそう。久瀬さんの形になる内側に震えながら、自分でもお尻を突き出して、挿入がもっと深くなるように身体をくねらせた。 「久瀬さん、だけっ」 「……」  重なった掌の大きさだけで蕩けるよ。 「カッコいいの、久瀬さん、だけ」 「……」 「あ、あと、アキさんが」 「?」  姫始めは済んでるんだねって笑ってた。他にも色々からかわれたけど、とにかくね。 「ラブラブすぎるわって言われちゃった」  この腕、好きだよって、後ろから俺のことを攻め立てながら両脇にある久瀬さんの腕に手で掴まって、キスをする。 「あっ……ン」  水滴を飲むように口づけたら久瀬さんのペニスが奥のところをノックした。深い場所、指は届かない、奥の、久瀬さんしか知らない場所をクンって突かれて、前に仰け反りそうになるから、腰を突き出して、自分から招いた。 「は、ぁっ……ぁっ、ン、久瀬、さんっ」  片手でタイルを突っぱねて、もう片手で貴方の腕にしがみついて、孔の口で、太くて硬い熱にしゃぶりつく。 「朝、ここ、噛まれたのゾクゾクした、ぁ」 「……」 「でも、やっぱり、これ、欲しかった、ぁ、あっ」  イきたいって、くっついたとこ全部で伝えると、激しさを増した。深く強く貫かれて、突き上げられて、背中を反らせて受け入れたら、大きな掌に胸を揉まれた。なんにもない胸なのに、揉まれたらとても気持ち良くて。 「ぁ、あっイくっ、久瀬さんっ、イくっ」  ツンと尖った乳首をきゅんって、指で摘んでコリコリ扱かれたら、もう。 「ぁ、あ、あっ、ぁっ……んんんんんんっ」  もうイってしまう。 「あっ……ン、久瀬、さんっ」  貴方が俺の中でイく瞬間が大好きだから、嬉しくて、すぐにイっちゃうんだ。中に放たれてるのを感じながら自分も吐き出してしまう。そして、その唇を猫らしく舐めながら、孔で指で、声で主に甘えていた。

ともだちにシェアしよう!