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第10話 初恋(?)

沈黙に耐えきれず先に口を開いたのはその子だった。 「…そういえば僕もまだ充分な自己紹介してないよね?」 「え?あ、あぁ」 突然の言葉に驚いて、豆鉄砲をくらった鳩のようにぽかんとした表情になる。 「えっと、玄兎高校2年の一ノ瀬朔久です。 助けていただき、有難う御座いました。」 と少し照れたような表情で自己紹介をする (さっきはタメ口で話していたのに、お礼を言う時は敬語になるんだな) 先程の竹内という担任の言っていた、保護者とやらのおかげなのだろうか 赤くなったり青くなったりと、コロコロと変わる表情が可愛らしい と考えると同時に胸が高鳴り出す。 その気持ちに疑問を持ちつつも、と何事も無かったかのように返事をする。 「丁度非番で、適当に乗った電車で君が倒れて驚いたよ。もう大丈夫か?」 「うん、もう帰る」 「ここから駅までは少し遠いし、送っていくよ」 と言っても車で10分の距離なのだが、倒れたばかりの人を歩かせるのはいけないと判断する。 「大丈夫」 「今日倒れたばっかりなんだから、医者の言うことは聞きなさい」 少し間が空いて、 「…はい…お願いします。」 とその子は納得のいかないような表情で答え、俺は少し微笑んだ。 「よしっ!じゃあ車のキーを取ってくるからここで少し待っててくれ。」 「…分かった。」 「ん、いい子。」 無意識にわしゃわしゃと髪を撫でてから、自分で「はっ」とし、「すまん」と短く言うと、急いで病室を出て口元を抑える。 (…!!なんで俺はあの子の頭を撫でたんだ??) 頭を無意識に撫でてしまったこと。 青くなったり赤くなったり表情がコロコロと変わるのも可愛いと思ってしまったこと。 自分でもわかるくらい顔が熱くなる (いや、特に意味は無い!弟達に向ける気持ちと変わらない………よな…?) しかし、既に成人した2人の弟の高校生の頃の姿や行動を思い出してみても、頭を撫でたことなど1度もない。 でもあの綺麗な顔と、コロコロと変わる表情を思い出すと、心拍数が上がり始め、 "可愛い"という言葉が頭の中でぐるぐると回り、パニックが起きる (あ〜〜まじかー……) 真っ赤になった顔を手で覆ってしゃがみこむ (…初恋の相手が高校生かよ、、、、、)

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