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第11話 番外編【朔久の見た夢】

暗い 暗い 何も見えない。 深い深い闇の中で膝を抱えると、自分の存在だけが分かった ここは暗くて、静かで、寂しい いったいどこに居るんだろう すると、ぽっと明かりが灯る 僕の両側には、 お母さんと、お父さん。 自分の身体を見ると、今よりかなり小さい 僕がそのちいさな手を両親に伸ばして手を繋ごうとすると、両親は優しい目で… 優しい目で…? 突然、顔がマジックでぐじゃぐじゃに塗りつぶされ、世界が徐々に暗転し始める 両親の口元が動いているのは辛うじてわかるのに、声も聞こえない 顔も、声も、分からない。 どっちも思い出せない。 目からぽろりと大粒の涙が零れると、堰を切ったようにぼろぼろと涙が溢れてくる 『なんで…!!!?なんで分からないの!!!? ねぇ!!なんで忘れちゃうの…っ…どうして…』 大切な思い出と分かっているのに、 大切な人だとわかっているのに、 『………ぼくは忘れたくないのに…っ』 どうして大切な思い出ほど、消えていってしまうんだろうか 声も 顔も 一緒に過ごした時間も 全て―――― 『ねぇやめて…!やだ…!! …っ…おとうさんとおかあさんをつれていかないで、』 光と共に消えていく両親に手を伸ばすが、その手は届かない。 『ねぇ…っ…ぼくをひとりにしないで……』 暗闇に自分の声が虚しく響いた。 番外編 【朔久の見た夢】end

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