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第12話 心配そうな顔
「檜山」と名乗ったその人は、僕の頭をわしゃわしゃと撫でて部屋を出ていった。
(人に頭を撫でられたのなんて、お父さんとお母さんが死んで以来、初めてだ…)
と、少し照れくさいような気持ちになる。
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僕の両親は、僕の6歳の誕生日に交通事故で死んだ。
僕が遊園地に行きたいと駄々をこねて、家族皆で遊園地に行くことになった、あの日の朝。
信号待ちをしていた所に、居眠り運転のトラックが隣の車線から蛇行運転をしながらかなりのスピードでこちらへ向かってきて、正面から衝突。
運転席に乗っていたお父さんと、助手席に乗っていたお母さんは見るも無残な程に押し潰された
後ろに乗っていた僕は重傷を負ったものの、奇跡的に助かった
その後、僕は叔父夫婦に引き取られたが、叔父夫婦は両親にかかっていた保険金だけが目当てだったようで、僕は要らない存在となり、口を開くと殴られる、蹴られるは当たり前の生活になった。
けれど、周囲にバレないようにと学校には行かせてもらえていたし、食事は与えられていた。
そのうえ、叔父と義理の叔母は通訳をしており、世界中を駆け回る事も多かったから、ひっそりと生きていればそれでなんとか生活出来ていた。
けれど僕の13歳の誕生日にそれは変わった
叔母は1週間泊まりがけでイタリアへ行っていて、僕と叔父だけが家にいた。
誰にも祝われることの無い誕生日を過ごし、
夜中に僕が家具もない白い壁の部屋で毛布にくるまって寝ていると、叔父である友久が突然押し入ってきて、僕を夫婦の部屋へと引きずり込み、ベッドに僕を投げた。
「いっ…た…ぃ…」
「朔久、ちょっと代わりになれ」
(代わり…??)
「……代わりって何の…?」
「うるせぇ!」
突然お腹を殴られると、衝撃に抑えきれずに声が漏れる
「うっ…」
「なぁ、いいよな??」
ギラギラとした目で問いかけてくる友久はいつもと様子がおかしいが、
拒否をするとさらに殴られるだろうということは今までの経験で分かっている。
僕には…拒否権なんてない。
息を張りつめ、震える身体で少し頷いた
友久は服のボタンを無理矢理に外し、下着を剥ぎ取ると僕を――――――
「………ぃ……おい!!!!!朔久!!」
檜山さんに呼ばれて、「はっ!」と意識が戻る
「…あ…ひやまさ……っ…」
「どうした??顔が真っ青だぞ???」
覗き込む顔は本当に心配してるという顔で、
その顔を見ると気持ちが少し安らぐ。
「あ……大丈夫です……」
「もう少し休んでから帰るか?」
首をふるふると小さく横に振る
「そうか…?車は入口の近くにあるけど歩けるか?」
「…うん」
と僕が小さく呟くと、
「…よし、じゃあ行くか」
と檜山さんは、まだベッドに座っていた僕の手をとって、立ち上がらせてくれた。
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