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第26話 訳あり

病院に着くと、タクシーで病院へと到着した瑛と合流し、酒も飲んでいた為、朔久の治療は夜勤の医師に任せて急患の家族用のソファへと腰を下ろした。 「なぁ…朔久、大丈夫だと思うか…?」 「うーん、低体温症の方はなんとも言えないけど、ぱっと見た感じ、傷らしい傷は頬の叩かれたような痕と手首の擦り傷だけだったから大丈夫じゃないかな」 「それは俺も見たから分かる。俺が言ってるのは心の方だ。」 「あ〜…パーカー1枚で精液の匂いしたし、なんかいかにも訳ありな感じだったよね。」 「…」 「まぁそこは宗一郎の腕の見せどころじゃない? 一応精神科医なんでしょ?」 「…あぁ」 とだけ言葉を交わすと瑛はそれ以上何も詮索しては来ず、沈黙が流れた ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 会話をしてから20分ほど経ったのだろうか 「宗一郎先生、治療終わりましたよ〜」 と、物腰の柔らかな内科の櫻田先生が急患の治療室から出てきた 「櫻田先生!朔久はどんな感じですか!!?」 「取り敢えず命に別状は無いし、低体温症の方も大丈夫だったよ。 神宮寺さんが適切に対応してくれたお陰だね。」 「…瑛。本当にありがとう。」 と頭を下げると、 「いや、誰だって冷たくなってる人を見つけたらそうするだろ」 と少し恥ずかしそうに瑛は答えた。 「じゃあ俺は手伝えることないし、先に帰るわ」 気がつけば時間もかなり遅くなっていて、いつまでも付き合わせる訳にもいかない。 「あぁ、本当にありがとう。気をつけて帰れよ。」 と感謝の気持ちも込めてタクシー代を無理やり渡すと、暫くは「要らない」と言っていたものの、俺が断固としてひかない様子を見て大人しく受け取り、帰っていった。

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