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第27話 笑顔

「本当に仲がいいねぇ」 とくすくすと笑う櫻田先生に、 「子供の頃からの付き合いですからね」と少し笑い返す 「それでね、さっきの話にはまだ続きがあるんだけど、一ノ瀬朔久くんだっけ? 腹部や胸に切り付けられたような傷と、両手首についた擦り傷と、首を締められたような手形があったんだよね。 腹部の傷は軽傷で、表面だけを切った感じになってるんだけど、複数あって少し驚いたよ。」 「…そんな傷があったんですね」 「あとね、気を悪くしないで欲しいんだけど、 その……精液が付着していたからちょっと全身を調べたんだ。」 「…はい」 「そうしたら腸の中にもまだ入っていて、一応警察に出すためにある程度取らせてもらって、その後にそれの洗浄と、肛門がかなり切れていたから薬を少し塗らせてもらったよ」 (櫻田先生が朔久の後ろを触ったのか…!?) と考えるとなんとも言えない感情がこみあげてくるが、 「いえ、ありがとうございます。」 とだけお礼を言って頭を下げた。 「ふふっ」 「??」 「その子のこと、大切に思ってるんだね」 と俺の気持ちに気がついているかのように、櫻田先生は笑顔でそう言う 「……っ…なんのことでしょう?」 「隠さなくていいよ。俺、偏見なんてないし。」 「…いつから気が付いてました?」 「うーん。搬送されてきた時かな? いつも冷静沈着!っていう感じの宗一郎先生があんなに慌ててるのなんて初めて見てちょっと気になったんだよね」 「本当にすごいですね……」 「瑛くんには隠してないようだったしね〜 朔久くんと宗一郎先生は付き合ってるの?」 「いやまだ…っていうか、俺の一方的な片想いです」 「そっかぁ…頑張れ♪」 と楽しげに笑う表情は2個も年上には見えない 「それはそうと、」 「一ノ瀬くんのこの怪我の理由、知ってるんじゃないの?」 櫻田先生のスっと表情が変わり、温度差に少しぞくりとする 「…はい。朔久の意識が戻っていないので確証は得られていないのですが、恐らく虐待です」 「…虐待ねぇ……だから保護者に連絡が出来ないのか。」 「はい。」 「意識戻ってないし、このまま入院させたいんだけどどうする?」 「身体も心もだいぶ傷ついているだろうし、治療費は俺が持つので入院させてやってください。」 「ふふっ…愛だねぇ。」 と櫻田先生はニコリと微笑んで、書類を取りに処置室へと戻って行った。

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