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第28話 307号室
櫻田先生から貰った書類に記入し、入院の手続きを済ませると朔久の病室である個室の307号室へと向かう。
時刻は既に0時を過ぎていて部屋はかなり暗いが、月明かりが静かにベッドに差し込んでおり、そこで眠る朔久の青白いとも言える顔を照らしていた。
近くにある椅子に座り、まだどこか幼さの残るその顔を見ると、とても高校生には見えなくて、手を伸ばして頭を撫でる。
「……なぁ、朔久。」
「ごめん、何も出来なくて。」
「ずっと一人で頑張っていたんだな」
「…辛かったよな。」
「…俺があの時、無理矢理にでも聞き出せば…」
と言葉をかけるが、もちろん返事はない。
すると突然涙が出そうになり、天井を向いた。
朔久がどんな環境で育って、今どんな生活をしているのかを詳しくは知らないが、今回の一件で、高校2年生が抱えるには重すぎる状況で過ごしていることだけは分かった。
(今俺が泣いていたって仕方が無い。)
(俺に今、出来ることをしよう。)
と自分に言い聞かせると、ぐっと唇を噛み締めて、椅子から立ち上がり、部屋を出る。
『愛だねぇ』
と言った、櫻田先生の言葉が頭で谺響した。
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