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第4話
「少し顔が赤いですね。そんな熱っぽい目をして……。もう一日お休みして、治療しますか?」
決して広くない洗面所の中で、頬をくすぐるように撫でられ、ぞくぞくとした感覚が背筋を駆け昇る。発情期は落ち着いたはずなのに。ダークブラウンの髪を揺らしながら、同じ色の澄んだ瞳にのぞき込まれ、心拍数が跳ね上がった。
反射的にまぶたを閉じたとき、後ろから伸びてきた腕が、典生をガードするように抱きしめた。
「臣、治療なら俺がやるから、典生様から離れて」
ふわりとベルガモットの香りが鼻先を掠め、低く甘い声が耳元に落ちる。あ、と思ったときには、女性を扱うようなスマートさで腰を支えられていた。
「典生様、今日は無理しないで、たっぷり体を休めよう」
典生を見下ろす薄茶色の瞳に、夜を思わせる色香が滲んでいる。
小鳥遊芹 は、臣とはまた違うタイプの美青年だ。真面目で穏やかな印象の臣と、気さくで柔らかなイメージの芹。どちらも女性の扱いに長けた王子様系男子に違いなく、童貞で恋愛経験の乏しい典生などイチコロだ。
二人の近くにいればいるほど、あまりにも不釣り合いな自分に泣けてくる。
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