「もう大丈夫だ。……いつも治療してくれて、ありがとう……」 　尻すぼみになりつつなんとか礼を言うと、二人は目を輝かせて破顔した。 「それが私たちの仕事なんですから、お礼なんていいんですよ」 「そうそう。俺たちにはもったいない言葉だよ」 　面と向かって『仕事』と言われてしまい、言葉の刃物が心臓を貫く。彼らなりに敬意を示してくれているのだと、頭ではわかっているのに心が追いつかない。与えられる優しさも、ぬくもりも、彼らの意思とは無関係なのだ。 「仕事だからこそだろ。俺なんかのためにありがとう」 　胸が痛くてたまらない。半年後には契約期限を迎えるのに、贅沢にも、仕事としてでなく彼らの意思でそばにい続けてほしいと願ってしまう。 「本当に平気ですか？　最近ヒートの周期も安定していませんし、少しでもしんどくなったらすぐに仰ってくださいね」 「俺たちがちゃんとそばで守ってるから安心して。もし俺が欲しくなったら遠慮なく言うんだよ」 　パチンと慣れた調子でウィンクされ、ようやく肩の力が抜けた。思いつめていた気持ちが緩む。先のことはどうであれ、後悔のないようにすごさなければ。