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第7話

 彼らの陰口は大体が的を得ている。平均的なオメガならもっと美しく、華があり、治療を施す側も少しは楽しめただろう。たまたま大河内家に雇われたせいで、本来なら選び放題の臣と芹が、好みでもない相手に奉仕を求められているのが現実だ。 (好み、俺と真逆なんだよな……)  隣を歩く臣に視線をやると「どうしました?」と目を細める。無言のまま首を振り、下駄箱から取り出した上履きに履き替えた。  前にさりげなく好きなタイプを尋ねたことがある。彼は「そうですね……。凛としたきれいな方でしょうか」と答えた。芹からは「真っすぐでかわいらしい人が好きだな」と応えがあり、身のほど知らずにも落胆してしまった。根暗で冴えない典生ではかすりもしないじゃないか、と。 ほんの少しでも気に入られる要素があったなら、契約を延長してもらえたかもしれないのに。  沈みそうになる気持ちをなんとか上向かせようと顎を上げたとき、廊下の端で窓枠にもたれかかっていた男と目が合った。 「ようノリちゃん。毎日忠犬なんかと一緒で息苦しくねえの。ヒートでなきゃ誰もお前を襲おうなんざ思わねえだろ」

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