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第9話

 年上で同級生のアルファへの接し方など難しいに決まっている。典生とは別の意味で敬遠されている彼は、生活態度もいいとは言えず、必要最低限の出席日数を保ちながら、早退と遅刻を繰り返していた。  噂によると恋人のオメガをかばって事故に遭い、それが原因で鼻が利かなくなったらしい。彼はアルファとしての性を授かりながら、フェロモンを嗅ぎ分けることができない。オメガの発情期に惑わされることもなければ、運命の番に出会えることもないのだ。  アルファらしい美丈夫とはいえ、同性からはそんなことを理由に格下扱いされている。「性別に振り回されて、かわいそうなヤツ」という羽根崎の言葉は、典生だけにあてた言葉ではないが、いずれにせよ、情緒不安定な典生にとって、傷口に直接塩を塗りこまれたのと変わらない。  教室に到着すると、臣は廊下で待機し、芹は室内で主の様子を見守る。毎日のことなので、クラスメートや教師ももう慣れっこだ。しかし典生だけは、日に日に大きくなる焦燥と、羽根崎の指摘に気持ちを引きずられ、二人の気配が気になって仕方がなかった。

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