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第10話
正午を回り、屋上に移動して弁当を広げたが、朝より体が火照っている気がして首を傾げた。思考を無駄に働かせたおかげで知恵熱が出たのだろうか。
「典生様、やはりお加減が優れませんか?」
「いや、平気だ」
察しのいい臣に体調を気づかわれる。二人の手を煩わせるようなことはしたくないが、羽根崎から出会い頭に投げつけられた嫌味を振り払うことができず、ぐるぐるとマイナスの感情に支配されていた。
――ヒートでなきゃ誰もお前を襲おうなんざ思わねえだろ。
痛いところを指摘されてぐうの音もでない。幼い頃から典生はいたって平凡な少年で、女性にモテたことも告白されたこともなかった。せいぜい家柄のおかげで結婚には困らないだろうと言われる程度の、つまらない人間だったのだ。
そんな自分に朝から晩まで付き添わせ、ときには奉仕までさせて、それ以上のことを期待してしまう自分が恐ろしい。贅沢な望みだとわかっているが、臣と芹を失いたくない。卒業後もそばにいて欲しい。
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