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第11話

この二年半、典生のつらい時も、嬉しい時も、常に二人がそばにいて、優しく手を差し伸べてくれた。慈しまれるように大切に触れられる時間は、あたたかく、幸せで、たとえ仕事であったとしても、二人に惹かれずにはいられなかった。  沈んでしまった心はなかなか隠し通せるものではない。もたもたと食事の進まない典生の手に、すらりと長い指が重なった。 「やっぱり具合がよくないんでしょう。この後早退して病院に行こう。典生様はすぐ平気って言うけど、俺は信じないよ」  有無を言わせぬ態度で、芹が食べかけの弁当箱を片付ける。心配なんてかけたくなかったのに、嬉しくて頭の中がぐちゃぐちゃになる。  すぐに早退届けを出し、行きつけの病院へと向かった。対応した馴染みの中年医師は、軽い問診と診察のみで済ませ、異常なしと判断した。 「ヒートの周期がずれたり、微熱状態が続くのは、心因性のストレスが問題でしょう。高校三年生なら進路に対する不安も大きいでしょうし、ほどよく発散するように心がけてください」

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