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第16話

木陰に引きずり込まれ、両手で尻を鷲掴みにされたまま、首筋を舐られた。外見では判断しづらいが、男がアルファなのは間違いない。 「発情期の生セックスって、すごく気持ちいいんだよ」  生ぬるい息を耳に吹きかけられて凍りつく。 「い、嫌だ……っ」  首の付け根をトントンと叩きながら「ここ噛んであげようか?」と囁いた男が、大きく口を開いた。 「やめ……っ」  瞬間、男が背後から誰かに蹴り飛ばされた。ドサッと地面に膝をつく音と、カメラのシャッター音が響く。 「オッサンよぉ、こいつが未成年だってのは見りゃわかんだろ。淫行罪で捕まりてえのか!」  声の主はもう一発男の背中に蹴りを食らわせ、へたり込みそうになった典生を引き寄せると、ひょいと肩に担いだ。 「てめえもバカか! 発情期のくせになんで一人でいんだよ。番犬はどうした」  この口の悪さには嫌というほど覚えがある。 「……羽根、崎?」  典生を精神的に追い詰めた張本人が危機から救い出し「クソ重いなデブ」と息をするように罵っている。どうして彼がここに……と首を傾げながらもホッとしている自分がいた。

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