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放課後と再会 01歩
あの日から一ヶ月経った。
暖冬と言われていたけど、流石に1月になると寒くなってきた。
楢崎さんには連絡はしてないし、会ってもいない。
僕はいつも通り講義を受けて、いつも一緒にいる人たちと昼食を食べ、帰るところ。
いつもいる人たちと話したり遊んだりするのはそれなりに楽しいと思う。
ただ僕の闇の部分なんか知らないから、いつも明るく笑っていないといけない。
辛くて体が動いてくれなくて講義を休むときは「寝坊した」「体調悪かった」ってヘラって笑って誤魔化す。
たまに「それは甘えだ」と言う人がいて酷く傷付くけど、何も言い返せないからまたヘラって笑って誤魔化す。
人前で笑うのは疲れる。でも笑っていないと自分を支えきれない。
「つかれたな…」
「え?どうした?」
「何でもないよ」
僕はすぐに笑顔を作って誤魔化す。
いつもいる人の一人、一之瀬 響(いちのせ ひびき)に聞かれてしまった。
響は人見知りしなくて誰とでも絡むことができる。そんな人が僕なんかと絡んでいて、楽しいのかすごく疑問だ。
響とは割と二人で遊んでいる。オタク同士だから。
でも相談とかはお互いあまりしない関係。三年間一緒にいても縮まらない距離。他のいつもいる人たちも同じ。
「柚月今日帰りに本屋寄らない?」
「いいよ」
響の誘いで、僕達は本屋さんに寄って帰ることになった。
他の人たちは気乗りしないから、そのまま帰るらしい。
その本屋さんはアニメグッズや同人誌なども取り扱っているところでオタクなお客さんが多い。僕達もその一部に入る。
「あー!やっと買える!」
響が嬉しそうに数冊漫画を持ってきた。今日が給料日で、昨日までは金欠で我慢していたらしい。
僕もそういう事があるから、その気持ちは分かる。
「良かったね」
「おう」
「じゃあ、僕はお金払ってくる。響はまだゆっくり見てて良いよ」
僕は今日が発売日だった少年漫画を一冊だけ持ってレジに行った。
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