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放課後と再会 02歩
会計を済ませ響を探していると、アニメ化された漫画を置いているコーナーにいた。
「払ってきたよ」
「おー。なあ、このアニメ良かったから漫画買うか悩んでるんだけど、どう思う?」
そう言って響が指を指したのは、妖怪が見える主人公が妖怪と人間とどのように関わっていくかが書かれている漫画だった。今は深夜枠でアニメをやっている。
結構切ないけど、温かい話なんだよね。人間や妖怪からの愛情を主人公が感じることができて、人として成長することができるんだ。僕はそういう話がすごく好き。僕にはできないことだから。
「僕は良いと思うよ。おすすめ」
そう僕が言うと「じゃあ買う!」と決断した。
暫く色々なコーナーを見て響は満足してレジに行った。
それからは何となく帰る雰囲気になり、響と別れた。
僕は帰っても何もすることが無かったから、さっき行ったところとは別の本屋さんで気になっていた小説を買って、公園のベンチで座って読んでいた。
この公園は楢崎さんと会った公園。僕はここで小説を読むことが好きで良く来ている。
1月は暗くなるのが早いから、17時にもなると子供達は帰って静かになるからいいと思う。
暗くなると文字が見えなくなるから、ライトが真上にあるベンチに座って読む。
静かな公園で響くのはページを捲る音だけ。
僕が買ったのはファンタジー小説。
行き先はお供の話せる鳥が決めてくれる。雨が降り続ける国や、女の人だけがいる国、話せる動物達と共存している国など、主人公と鳥が色々な国を巡る話。
すごく面白い。
「眠くなってきたなあ」
いつもは音楽を聴きながら読んでいるんだけど、今日は忘れてしまった。
だから、静か過ぎて眠くなってくる。
段々重くなっていく瞼には抗えず、どうにか小説をリュックに入れ、リュックを抱えたまま眠った。
「おい」
声とともに体を揺らされて目が覚めた。
「う、ん…え…なら、さきさん…」
目の前には怒った顔の楢崎さんが立っていた。
この人はどうして怒っているんだろう。僕はこの人に何も迷惑をかけていないのに。
「どうしてこんなところで寝ているんだ」
「…眠かったからです」
「馬鹿か。風邪引くだろ」
「…僕が風邪引いても、楢崎さんには関係のないことです」
控え目にだけど、でもしっかりと自分の意見を言った。
だって、僕が風邪引いても本当に関係ない。
自己紹介してないから僕の名前も知らない人だし。
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