6 / 10
出会いと不要な温かさ 06歩
頭を撫でながら荷物を持ってお兄さんの待つ玄関に向かうと、お兄さんと目が合った。
「それさっきからやってるけどお前の癖?」
「は、はい…」
お兄さんは僕の返事に少し怖い顔をする。
どうしてだろう?もうしかして、目障りだった?
「目障りでしたよね…ごめんなさい」
僕が謝ると「はぁ」と溜息を吐いて、怖い顔を止めて困った顔で僕の頭をわしゃわしゃと撫でてくれた。
「お前には撫でてくれる奴いないのか?」
そんな人いるわけない。「死んで欲しい」と言われる存在の僕には、そんな温かいことをしてくれる人なんていないんだ。
「…そんな人、いません」
「そっか。俺が撫でてやるから、いつでも言えな」
「どうして…僕なんかに優しくしてくれるんですか…?何の特にもならないのに」
むしろ「汚い」から触りたくもないだろう。僕は他人を触るのも回し飲みも許されない存在だから。
ともだちにシェアしよう!