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21.確信

「……っ、…?」 頬に感じるほんのりと温かい感触で、目が覚める。 感触を感じた部分に手を持っていけば、手に触れたのはコツン、と固い感触。 「クゥン……」 「……ルー、ク…?」 自分の胸の上に乗り、頬を触っていたのは黒血火竜(ブラッディ・アリア)のルークだった。 ドラゴンの表情などわかるはずもないのに、ルークはここなしか心配そうな表情を浮かべている気がする。 そこでやっと、ノーラッドは自分の置かれた状況を理解する。 「……っ、なんだ…これ…?」 浮いている__いや、正しくは浮かされている。そういえば昨日、誰かに背中を斬りつけられてから今までの記憶が一切ない。 あの時、なぜ気配に気づけなかったのか。自分の特性があれば気付けない事などないはずなのに。不思議でならなかった。 「………、ダグラナ!!!!」 そこでやっと気づく。ダグラナがそばにいない。自分の視界の入るところに、いない。 恐らくいたであろう地面を見れば、そこにいるのはぐったりと横たわっているリリマと、大きな木の根元に寄りかかって寝ているダグラナの姿。 慌てて下へ降りようとすると、スルスルと自分を包んでいた薄緑の光がなくなっていく。 それはそのままダグラナへと吸い込まれ、やがて完全になくなった。 「………っ……、…」 昨日から、驚いてばかりだ。 今の魔力、自分の推理が間違っていなければ恐らくは疑似繭の眠り(ロスト・バック)。 まさか、そんな。 魔力が覚醒して、使徒認定を受けて間もないダグラナが? あのバカみたいに消費量の激しい癒し(ヒーリング)の魔力を? 「もしや……一晩中……?」 いや、そんなバカな…と思いつつダグラナを起こしてみることにしたノーラッド。 「ダグラナ、ダグラナ起きろ。……ダグラナ!」 「………ん…ノー、ラッド…? ………ノーラッド! 傷は?! 背中は大丈夫なの?!! もう起きてられる???!」 いきおい良く飛び付いてくるダグラナに一瞬うろたえたノーラッドだったが、どうにか受け止める。 その瞳は本気の心配の色が見てとれた。 「あぁ、もう平気だ。……それよりダグラナ、お前、俺に治癒魔法はいつかけた? 今朝か?」 「ううん、昨晩。ここに着いて、リリマと一瞬に。でも多分僕の方は切れちゃってたでしょ。だから実質、リリマ1人が頑張ってくれた感じだけどね」 ……今、なんと言った。…昨、晩? 昨日の夜…? 何かを閃いたように急に立ち上がるノーラッド、急いで森の少し開けている場所へと走ると、もうすっかり頂上近くまで昇っている日を確認する。 (……っ、太陽の位置からして恐らくもう昼前…。あの治癒魔力の光がダグラナに吸い込まれたのは俺が気がついた直後…。まさか………まさかそんな……!!) 「ノーラッド…?どうしたの…、もう動いて平気なの?」 「…あ、あぁ。お前とリリマのお陰で傷はもう平気だ。迷惑かけたな」 「……本当に? ノーラッド、すぐ無茶苦茶するから」 僕、リリマ起こしてくるね、と元いた場所へと戻るダグラナの背中をジッと見つめる。 ダグラナの話……。 ダグラナの魔力は〈全能〉(スプリーム)。 昨晩、ここに辿り着いてからリリマと協力してノーラッドに疑似繭の眠り(ロスト・バック)をかけたことになる。それから今の今まで。…一体何時間だ。 __ずっと、あの治癒魔力を自分にかけ続けていたというのか。 魔力を覚醒させてから一月(ひとつき)と経っていないあの子が。 恐らくリリマは魔力をかけて早々に力尽きて繭の眠り(スリープモード)に入っているはずだ。 いくら魔力が禁止級と言えど……そんな…。 _____あの小さな背中が、 この大陸、シェヴァンノを背負うというのか。 「…ダグラナ………」

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