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第9話

「佑月、風呂入ってこい」 「先に入っていいの?」 「ああ」 「…わかった」 司の家に来てから初めてのお風呂。 いつも入るのは最後だったから僕が入るときにはお湯は冷たくなっていて浸かる気にもならず、ここ5年は全てシャワーだった。 だから少し楽しみだなと思いつつも、お風呂には嫌な思い出も沢山あって少し入るのを戸惑ってしまう。 そして服を脱ぎ5年ぶりのお湯に浸かった。 「あったかい…」 お風呂ってこんなに温かいものなんだなと 思いながらも早く上がらなきゃ司が入る時 緩くなってしまうと思いすぐに上がる。 そして、髪と体を洗ってお風呂から出た。 タオルで体を拭いてリビングに戻ると 司はソファに座っていた。 「早かったな…ってお前何してんの?」 普通にお風呂に入って出てきただけなのに 何故か驚くような目で見られ、少し怒られた。 「…?」 「髪、まだ乾いてないだろ。ドライヤー使わなかったのか」 「ドライヤー?使っていいの?」 「は?使っていいに決まってんだろ。お前今までどうしてたんだよ」 「…お前に使う電気が勿体無いからドライヤーは使うなって言われてて、、だから自然乾燥で…」 「はぁ…ちょっとそこ座れ」 司は洗面台に行きドライヤーを持ってくると 佑月の髪を乾かし始める。 ワシャワシャと乾かす手が気持ちよくて寝てしまいそうになりながらも頑張って目を開ける。 そんな時間は長く続かなく、司の手が急に止まった。 「お前…シャンプーつけて洗ったか?」 「ううん、水で洗っただけだよ。」 「は?」 「…だって僕のシャンプーじゃないでしょ。だから僕が使ったらダメなんだよ。量が減っちゃう。」 「お前…いつもそんなんなの?」 「うん?」 「佑月行くぞ」 「え、どこに?」 「面倒だろうがもう1回俺と入るんだ。」 佑月は無理矢理、お風呂場へ連れて行かれ、 司は、佑月の服と自分の服を脱ぎ風呂に入った。 その後、佑月と自分の髪を洗い、ドライヤーで乾かし、1時間半かけて全てを終わらせた。 「風呂ごときにこんなに時間を使ったのは初めてだ」 「…僕も」 お前のせいだろと怒られたが、久々に楽しいお風呂に入れた気がした。そして何よりも温かかった。

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