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第14話〜司side

親父と話をした後、直ぐに長崎がいるであろう 部屋に俺は向かった。 部屋に近づくにつれて、アイツらの怒鳴り声と殴っているような鈍い音が聞こえる。 これだけされても口を割らない長崎はかなりの覚悟でここに来たんだろう。 そう思い、部屋に着いた俺はその扉を開ける。 「若、やっぱりコイツなかなか口を割りません。」 「司さん、申し訳ありません」 「見てたけど京さんと誠さん、すごい頑張ってるんだよ」「なのに…全然」 「つかっさんでも難しいっすよ!」 どうやら、桜庭と九条が口を割らせようと色々やっていたらしい。それを見ていたのが双子共と山城…そしてそれを自分もやりたいとキラキラした目で見ている荒井… 荒井の場合は過去に何度かやり過ぎて話せなくなる状態にまでしてしまったからきっと九条が止めたんだろう。 「若ぁ〜僕がやっていい?ねぇ!いい?」 「お前はダメだ」 「えー」 荒井は少しいじけて双子に文句を言っていた。 そんな荒井を双子は笑って慰める。 「はぁ…もういい、お前ら全員出ろ」 「ですがっ!」「ここまで来て引くのは…」「え〜若1人でやるの〜?」「次は俺に!」「「まだ見ていたいよね」」 全員が納得いかないようで文句を言い始める。 しかし、俺が口を割らすとなれば必ず全員外に出す。 「俺を呼んだのはお前らだろ?ならさっさと出ろ」 「「「わかりました…」」」 全員俺の言葉に従い外に出た事を確認すると鍵を閉め、もう体は限界であろう長崎の前に座った。 「若………」 「もう俺はてめえの若じゃねえ。俺を若と呼ぶな」 「…。」 「で、お前は言う気がないんだよな?」 「はい…」 「じゃ、いいぞ。言わなくても」 そう言って今まで伏せていた顔を上げて驚いたような顔で俺を見る。それを見る限りコイツはまだ元気らしい。 「その代わり…お前には家族がいるんだろ?」 「そんなものはいない」 「じゃ、コイツらがどうなっても問題はないな?」 右ポケットから2枚の写真を取り出し長崎に見せる。 すると長崎はまだシラを切るつもりか写真を見ようとはしない。 「妻と娘…こんなに笑って楽しそうだな?」 「だからそんな奴ら知らないと言っている。」 「そうか、関係なかったな…お前には。」 「でもよ、こいつらの明日はどうなっているかわかるか?」 「だからっ!関係ないとっっ!」 「こうなるんだよ」 -------バンッ!バーンッ! 司は銃を取り出し、その写真に写る女と子供の顔を目掛けて撃ち落とした。 写真からは煙が上がっており、写真に写る人たちの顔は全て無くなっていた。 それを見た長崎は何かが崩れ落ちたかのように涙を流した。 「全部っ…話します。」 「だからっ…もうやめて、、ください。」 「洗いざらい全部話せよ、じゃなきゃ妻と娘はお前の前から消えると思え」 「はいっ…申し訳ありませんでした…」 司は写真と銃をしまい、椅子から立ち上がる。 長崎は体を震わせながらも涙を流して 立ち去っていく司をただ、見ることしか出来なかった。 ドアを開ければ全員待っていたようで どうなったか知りたいようだ。 「若、どうでしたか。」 「ああ、終わった。全て話すそうだ。あとは九条に任せる」 「わかりました 」 「若って吐かせるの早いよね〜?僕たちには見せてくれないし…いつもどうやってるの?」 「「確かに」」 「あ?そんなの時と場合だ」 「ふーん」 確かに俺はいつも口を割らす時誰にも立ち入らせない。 一番の理由としては、アイツらまでもがこんなやり方をしてしまえば必ず誰か1人はいつか罪悪感に囚われ、自分を見失う奴が出てくるからだ。だから決して俺は言わないしやらせるつもりもない。逆に言えば、俺はこの方法で何人もの人を傷つけた事もある。 だが、若頭になったからには逃げ出すわけにはいかない。 最後までやりきるしかないんだ。 「じゃ帰るわ」 「はい、お疲れ様です。」 「桜庭、悪いが車を出してくれ。」 「はい、直ちに。」 やっと帰れると思ったらなんだか力が抜けてしまいそうになる。だが、そんな姿は見せてはいけない。 もう1度気合いを入れ直して車へと向かう。 佑月は大丈夫だろうか… そんな不安を抱きながら。

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