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第26話
「佑月!!」
「おい、佑月!しっかりしろ!」
誰かが僕を呼んでる。
誰だろう…
こんな僕の名前をまだ
呼んでくれる人がいたんだ…
段々と意識がはっきりしてきて
再び僕は目を開けた。
「つ、、か…さ?」
「…!」
目の前にはあんなに会いたかった司がいて
司は僕のことを思い切り抱きしめた。
「ほん、と…に司…なの?」
「ああ…」
「ど…うし、、て…いるの…」
「そんなのお前ともう1回話したかったからだ」
「え…?」
「会って謝りたかった…」
司の表情は暗くてよくは見えないけれど
うっすらと見える表情は酷く歪んで見える。
ああ、そんな顔をしないで。
せっかくのイケメンが台無しになってしまう。
全部僕が招いた結果なんだから。
「ううん、司は悪くない…の。全部僕がやった、、ことだからっ…」
「それでも…俺はお前に酷い事を言っちまった。佑月…ごめんな。」
「司…なんて顔して…るの…。僕ね、、ずっと司に会いたかったんだ…」
「ああ、俺もだ。」
「だから…会いに.....きて、、くれてっありが、とう…」
今まで会えなかった分を全部込めて司を佑月は
力一杯抱きしめ返そうとしたが、
体が思うように力が入らなくて、司の服を軽く握る。
それでも精一杯僕なりに抱きしめ返した。
「佑月、身体が冷え過ぎてる。まずは車まで運ぶぞ」
「でもっ…」
「もうこんな場所にいる必要はないだろ?」
「…。」
こんな場所にいる必要はない…か。確かにそうかもしれない。5年間ここにいていいことなんて1つもなかった。
嘘でもいいから1度だけでも愛されたかった。
「行ってらっしゃい」と一言声をかけてもらいたかった。
でも、結局…だめだったんだね。
なら、僕は司と一緒にこの家から離れるよ。
さようなら。
司は佑月を抱き寄せ車まで運ぶ。
その途中で、家から笑い声が聞こえた。
明るい家から絶えることのない笑い声
そして外から見てとても暖かそうな家庭。
やっぱり僕は邪魔だったんだなと感じる。
「アイツらっ…!!」
その声に苛立ちを感じた司は許せなく
そのまま殴り込みに行こうとする。
「若、ダメです。抑えてください。」
すると僕の知らない人が司を止めた。
だけど、今はそんなことを気にできるほど
佑月は頭が回っていなかった。
そのまま司は怒りを抑え佑月を車に乗せる。
「佑月、とりあえず医者行くぞ。」
「大丈夫…だから…いい」
「何言ってんだ。体は大事にしろって言っただろ」
「うん…」
「桜庭、普通の病院だと色々面倒だ。組に戻って風見に診てもらう。」
「わかりました。」
そして3人は組へと戻り、風見という男の場所に行った。
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