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第61話
書けない時はとことん書けないのに、ある日突然、噴火したように言葉が溢れる時がある。
別に国語が特別好きな教科だった訳でもなく、小説家を目指していた訳でもない。
漫画はよく読んだけど小説はそんなに沢山読んだ覚えもない。
そんな俺が小説家、なんて肩書きで飯が食えてるのは奇跡だと思う。
もっと凄い作家の本には俺の知らない言葉で色んな表現をしてて、俺はそれを読む度、自分のボキャブラリーの無さに嫌気がさす。
それでも仕事だから精一杯書いている。
こんな俺の文章が好きだと言ってくれる知らない誰かの為に。
担当編集者の高橋は本を作る事が生き甲斐の変な女だ。
結婚してもおかしくない年齢なのに、本と結婚して添い遂げると言っている。
そして俺が書く小説を好きだと言ってくれる変わり者だ。
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