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第63話
こんな風に自分をコントロール出来ずに執筆するのは初めてだった。
今までの俺は、スランプも特になく毎日コンスタントに数ページ分の文章を書いていたけど、今の俺はそうじゃない。
オンとオフがはっきりしすぎて身体も気持ちも置き去りになっていた。
オフの時はパソコンの前に何時間も座ったまま、何も考えられずに過ごし、オンの時は何かに取り憑かれた様に書きまくった。
どっちの状態でも腹は減らないし、眠くもならない。風呂に入りたい気分にもならなかった。
高橋が打ち合わせにやって来て、俺を見た時、顔を顰めたのは見た目が酷かったからだろう。
分かってはいるのにやろうとしない俺はきっと何処か壊れてるんだと思う。
「これ、次回の連載の案なんですけど」
持ってきた出版社の封筒から紙を取り出し俺に見せる。
こんな感じの話を書いてみませんか、という打診。
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