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第78話

「あの、大丈夫ですか?」 運転席から控えめに様子を伺う河内に、「大丈夫」と返して千鶴の顔を両手で挟んだ。 潤んだ目で俺を見る千鶴の顔は赤くなって、身体は火照っている。 ダダ漏れの色気に飲み込まれそうになる。 こんな車の中で、しかも河内がいるのにこのまま押し倒してしまおうか、なんて血迷ってしまう。 「千鶴!しっかりしろ!俺が誰かわかるか!?」 飲まれたら負けだ。 しっかりしなきゃいけないのは俺の方。 自分を叱責するつもりで大きな声を出した。 思ったよりも大きな声になってしまい、千鶴がビクリと身体を竦ませた。 途端に火照っていた身体から、熱が失われていく。 俺の怒鳴り声に近いその声が余程怖かったのかもしれない。潤んでいた目が冷めていく。 「さ……つき、さん?」 怯えながら俺の名前を呼ぶ千鶴。 酷く怖がらせてしまったみたいで喉が苦しくなった。

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