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第95話

「ねぇ、皐月さん。オレ、あんまり覚えてないんだけどお客さん大丈夫だった?」 「あー……」 起き上がってタバコに手を伸ばす。 一本咥えるとライターで火をつけて肺を煙で満たす。 「ヤバイ人だって聞いてたから覚悟して行ったんだけどな……」 「わかってて行ったのかよ」 「お仕事ですから」 「でもアイツはダメだ」 少ししか吸ってないタバコを力任せに消した。そして千鶴に向き直って頭を引き寄せた。 「……皐月さんって、何者なの?」 ぎゅっと腕に力を込めた。 やっぱりこのまま千鶴に黙っている訳にはいかないか。 「長い話になるけど、聞いてくれるか?」 「うん」 「でもまぁ、その前に腹減ったから飯だな」 千鶴の髪をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でると、「ちょー腹減った」と子供みたいに千鶴は笑った。

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