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第98話
真の幸せ、なんて皮肉な名前だと思う。
虐待を受けてる時点で幸せなんかじゃないんだから。
真幸とは同い歳だったから、一緒に行動する事が多くなった。
生気のない目は相変わらずだったけど、一ヶ月が過ぎた頃はポツポツと会話も増えた。
子供の順応性は凄いと思う。
毎日、寝食を共にするうちに見えない絆が生まれて、施設にいる子供達はみんな、お互いを信頼し合っていた。
施設の職員が根気強くていい人ばかりだったのと、爺さんがなかなか面の厚い曲者だったから上手くいっていたんだと思う。
二年ほど平和な時間を過ごして、真幸も笑顔を見せるようになった頃、真幸の母親が引き取りに来た。
前の彼氏とはちゃんと別れて今はパートだけどしっかり働いているからまた一緒に暮らしたいと言う。
そういう風に迎えがくる事はたまにあったから珍しい話ではなかった。
真幸が一緒に帰ると言って施設から引き取られていった。
今度は母親と一緒に幸せになってほしいと祈って、見送った。
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