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第105話
母親が金を何に使っているのかはよく知らなかった。
けれど、帰ってくるといつも泥酔状態だったからホストにでも貢いでいたんじゃないかと真幸は嘲笑った。
中学一年生の秋、学校に来ない真幸を心配した担任が家を訪ねた際に母親に真幸を勧められ、その生活は担任の告発によって終止符が打たれた。
真幸はまた施設に帰って来た。
俺はその時もまた「おかえり」と言って迎えた。
真幸はもう何も言わなかった。
話すことを忘れてきたみたいに、誰とも口をきかなかった。俺はそんな真幸の側に居ることにした。
学校の中でも休み時間は必ず真幸の教室まで行った。別に何かを話すわけじゃない。
ただ、側にいた。
俺がそうしたいと思ったから。
真幸はたまに自分で客をとって金を稼いでいた。俺はそれを止める術を知らなかった。
だからずっと、真幸の帰りを待ち続けた。
その頃から俺はちゃんとした感情や感覚を少しずつ持ち始めていた。
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